前回は「2:保育の計画と内容 その⑨」について解説・紹介しました。
今回は「4:開所時間及び一斉休園」を解説・紹介していきます。
今回の「開所時間及び一斉休園」では、次の1つの事項について確認されます。
4 開所時間及び一斉休園
ア 保育需要に応じて適正に開所時間を設定しているか。※開所時間の記入
イ 年末年始、日、祝日以外に一斉休園を実施していないか。※実施している場合、年末年始、日、祝日以外の休園日を記載すること。
になります。そして対応する根拠法令が、
ア・・・児童福祉施設最低基準第34条、鹿児島県児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例第48条、子ども・子育て支援法第20条第3項、子ども・子育て支援法施行令第1条、子ども・子育て支援法施行規則第4条第1項
イ・・・児童福祉法第39条
となります。それでは確認していきましょう。
※関係書類の記載はありませんでした。
4 開所時間及び一斉休園
ここでは「開所時間及び一斉休園」について、2つの観点から確認しています。
ア 保育需要に応じて適正に開所時間を設定しているか。
ここでは保育所の開所時間について確認しています。
まずは疑問点のおさらいです。
それでは法令を確認します。
児童福祉施設最低基準
(保育時間)
第34条 保育所における保育時間は、一日につき八時間を原則とし、その地方における乳幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長がこれを定める。
ここで確認されているように、保育所における保育時間は、原則として1日8時間と定められています。
注意すべきは、ここで定められているのは「保育所の保育時間」です。言い換えると「保育を提供する時間」の事を意味します。
つまり保育を提供する時間が「8時間」であり、保育所の開所時間自体ではありません。この点には注意しましょう。
では、保育所の開所時間は、一体何時間になるのでしょうか。
結論から言いますが、保育所の開所時間は子どもの「保育必要量の認定」によって決定されます。
少しく面倒ですが、まずは確認していきたいと思います。
保育必要量の認定
「保育必要量の認定」は保護者が保育所を利用する際、行政機関によって決定されますが、決定までは次のような流れになります。
この「保育所利用の認定を行う」際、同時に子どもの保育時間も決定されるのです、
その保育時間が次の法令に定められています。
子ども・子育て支援法施行規則
(保育必要量の認定)
第4条 保育必要量の認定は、保育の利用について、一月当たり平均二百七十五時間まで(一日当たり十一時間までに限る。)又は平均二百時間まで(一日当たり八時間までに限る。)の区分に分けて行うものとする。ただし、申請を行う小学校就学前子どもの保護者が第一条の五第二号、第五号又は第八号に掲げる事由に該当する場合にあっては、当該保護者が一月当たり平均二百時間まで(一日当たり八時間までに限る。)の区分の認定を申請した場合を除き、一月当たり平均二百七十五時間まで(一日当たり十一時間までに限る。)とする。
ここで保育必要量の認定について、1ヵ月あたり平均275時間、または200時間の区分に分けて決定されるとしています。これを1日あたりの時間に置き換えると、1日11時間、または8時間となります。
そして行政機関は、この法令に従って子どもの「保育時間」の認定を行います。
つまり、この11時間の認定を受けた児童がいる場合、保育所の開所時間は11時間となるのです。
ここに、保育所の開所時間の根拠があります。
※しかし、保育所の保育時間は原則1日8時間と定められているにも関わらず、認定時間によっては、1日8時間を超えた保育が平然と行われているのが現状です。不思議な話です。
イ 年末年始、日、祝日以外に一斉休園を実施していないか。※実施している場合、年末年始、日、祝日以外の休園日を記載すること。
ここでは保育所の一斉休園の実施について確認しています。
まずは疑問点のおさらいです。
それでは法令を確認します。
第39条 保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設(利用定員が二十人以上であるものに限り、幼保連携型認定こども園を除く。)とする。
② 保育所は、前項の規定にかかわらず、特に必要があるときは、保育を必要とするその他の児童を日々保護者の下から通わせて保育することができる。
この確認事項の根拠法令は、この児童福祉法のみです。
法令を読むと、直接的に休園については明言されていません。
しかし保育所の目的を考えた時、次のように考えられます。
ここで定められているように、保育所は「保育を必要とする乳児・幼児」に対して「保育を行うことを目的とする施設」です。つまり、”当日”に保育を必要とする乳児・幼児が1人でもいるのであれば、開所しなくてはならない(=休園できない)、と考える事が出来ます。
逆に言えば、保育を必要とする乳児・幼児が1人もいなければ、”当日”は休園にしても構わないとも言えます。
このように、保育所の一斉休園は「保育を必要とする乳児・幼児」が「いる」場合は開所しなくてはならず、「いない」場合のみ、休園することが可能と言えるでしょう。
しかし、保護者から「毎日保育が必要です」なんて言われた場合、保育所は365日開所しないといけないのでしょうか…
台風をはじめとした天災の場合は?
保育を必要とする乳児・幼児がいた場合、保育所は開所する必要があると言いました。ここで疑問なのは、台風等の天災が発生した場合の対応です。
これについて法令等を調べても、明確な回答は得られませんでした。
そこで必要な事は、施設の在り方だと思います。
保育所をはじめとする福祉施設では、利用者の安全が確保されていることが前提にあります。そして、利用者の安全を確保するためには、同様に職員の安全も確保しなくてはなりません。
つまり、台風等の天災が発生した場合の施設の開所・休園は、利用者や職員の安全を確保できるという前提が必要になると言えます。しかし職員の安全の確保の基準はどのように決めればいいのでしょうか。
そこで目安になるのは、「警報」です。
台風等が発生した場合、ニュースでは警戒レベルに応じて「警報」を発表しています。これを目安に、自分の施設ではどの程度の「警報」なら対応できるか。あるいはどの程度の「警報」であれば対応できないのか。それを施設全体で把握して、行政機関に伝えるようにしましょう。
施設と行政機関では、開所に関する認識は異なっています。
なので天災等が発生した場合の開所について、施設としての対応範囲を行政機関に伝える事で、施設と行政機関における職員の安全確保の基準を共有化し、同じような天災が起きた場合、迅速に対応する事ができるようになります。
まとめ
今回の「開所時間が及び一斉休園」では、保育所の地域社会との交流について確認されました。
それらを踏まえて今回の「開所時間及び一斉休園」の要点は、次の2つになると言えるでしょう
①保育所の開所時間は、子どもの保育時間認定によって決定される。②保育所は「保育を必要とする乳児・幼児」に保育を提供する施設でるため、基本的に平日等の休園は認められない可能性が高い。
次回は、「5:相談・苦情への対応」について調べていきます。
備考
鹿児島県児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例
(保育時間)
第48条 保育所における保育時間は、一日につき八時間を原則とし、その地域における乳幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長がこれを定めなければならない。
子ども・子育て支援法
(支給要件)
第19条 子どものための教育・保育給付は、次に掲げる小学校就学前子どもの保護者に対し、その小学校就学前子どもの第二十七条第一項に規定する特定教育・保育、第二十八条第一項第二号に規定する特別利用保育、同項第三号に規定する特別利用教育、第二十九条第一項に規定する特定地域型保育又は第三十条第一項第四号に規定する特例保育の利用について行う。
一 満三歳以上の小学校就学前子ども(次号に掲げる小学校就学前子どもに該当するものを除く。)
二 満三歳以上の小学校就学前子どもであって、保護者の労働又は疾病その他の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの
三 満三歳未満の小学校就学前子どもであって、前号の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの
子ども・子育て支援法
(市町村の認定等)
第20条 前条各号に掲げる小学校就学前子どもの保護者は、子どものための教育・保育給付を受けようとするときは、内閣府令で定めるところにより、市町村に対し、その小学校就学前子どもごとに、子どものための教育・保育給付を受ける資格を有すること及びその該当する同条各号に掲げる小学校就学前子どもの区分についての認定を申請し、その認定を受けなければならない。
(~中略~)
3 市町村は、第一項の規定による申請があった場合において、当該申請に係る小学校就学前子どもが前条第二号又は第三号に掲げる小学校就学前子どもに該当すると認めるときは、政令で定めるところにより、当該小学校就学前子どもに係る保育必要量(月を単位として内閣府令で定める期間において施設型給付費、特例施設型給付費、地域型保育給付費又は特例地域型保育給付費を支給する保育の量をいう。以下同じ。)の認定を行うものとする。
子ども・子育て支援法施行令
(法第七条第十項第四号ハの政令で定める施設)
第1条 子ども・子育て支援法(以下「法」という。)第七条第十項第四号ハの政令で定める施設は、法第五十九条の二第一項の規定による助成を受けている施設のうち、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第五十九条の二第一項に規定する施設(同項の規定による届出がされたものに限る。)であって同法第六条の三第十二項に規定する業務を目的とするものとする。