前回は「2:保育の計画と内容 その①」について解説・紹介しました。
今回は「2:保育の計画と内容 その②」を解説・紹介していきます。
※ここでは計13個の項目に沿って調べられますので、複数回に分けて紹介・解説していきます。
今回は(3)の項目を紹介します。
(3)保育の内容
ア 子どもの心身の発達や活動の実態などの個人差に考慮した保育となっているか。
イ 一人ひとりの子どもの気持ちや行動を受け止めて,援助を行っているか。
ウ 子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応するとともに、すでに入所している子どもに不安や動揺を与えないように配慮しているか。
エ 子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるよう配慮しているか。
オ 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植え付けないよう配慮しているか。
カ 乳児保育に当たっては,生育歴の違いに留意しつつ,欲求を適切に満たし,特定の保育士が応答的に関わるなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
キ 3歳未満児の保育に当たっては,子どもの自我の育ちを見守り,情緒の安定を図りながら,自発的な活動を促していくなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
ク 3歳以上児の保育に当たっては,保育所の保育が小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し,幼児期にふさわしい生活を通じて,創造的な思考や主体的な生活態度等の基礎を培うようにするなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
ここに対応する根拠法令が、
(3)・・・児童福祉法最低基準第35条、鹿児島県児童福祉施設の整備及び運営に関する基準を定める条例第49条、保育所保育指針第2章1,4
となります。それでは一つずつ確認していきます。
- (3)保育の内容
- (ア)子どもの心身の発達や活動の実態など個人差に考慮した保育となっているか。
- (イ)一人ひとりの子供の気持ちや行動を受け止めて、援助を行っているか。
- ウ 子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応するとともに、すでに入所している子どもに不安や動揺を与えないように配慮しているか。
- エ 子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるよう配慮しているか。
- オ 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植え付けないよう配慮しているか。
- カ 乳児保育に当たっては,生育歴の違いに留意しつつ,欲求を適切に満たし,特定の保育士が応答的に関わるなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
- キ 3歳未満児の保育に当たっては,子どもの自我の育ちを見守り,情緒の安定を図りながら,自発的な活動を促していくなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
- ク 3歳以上児の保育に当たっては,保育所の保育が小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し,幼児期にふさわしい生活を通じて,創造的な思考や主体的な生活態度等の基礎を培うようにするなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
- まとめ
- 備考
(3)保育の内容
ここでは「保育の内容」について、8つの観点から確認しています。
はじめに「保育の内容」には、「何か」義務的なものがあるのかを法令から確認します。
児童福祉法最低基準
(保育の内容)
第三十五条 保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とし、その内容については、厚生労働大臣が定める指針に従う。
鹿児島県児童福祉施設の整備及び運営に関する基準を定める条例
(保育の内容)
第四十九条 保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とし、その内容については、設備運営基準第35条の規定に基づき厚生労働大臣が定める指針に従わなければならない。
※下線部の「設備運営基準第」とは「児童福祉法最低基準」のこと。
一読して分かるように、この2つの法令において「保育の内容」は、「厚生労働大臣が定める指針に従う」ように定めてあります。それではここで言う「厚生労働大臣が定める指針」とは何でしょうか?
この「指針」とは、「保育所保育指針(以下「指針」)」の事を指します。
つまり保育園で実施する「保育の内容」は、「指針」に基づいて決定、実施されるのものなのです。ここに「保育の内容」が指針に基づく義務があります。
それでは次に「保育の内容」に対応する指針の中身を確認していきます。少し長いですが引用します。
保育所保育指針
1 乳児保育に関わるねらい及び内容
(1) 基本的事項
ア 乳児期の発達については、視覚、聴覚などの感覚や、座る、はう、歩くなどの運動機能が著しく発達し、特定の大人との応答的な関わりを通じて、情緒的な 絆きずなが形成されるといった特徴がある。これらの発達の特徴を踏まえて、乳児保育は、愛情豊かに、応答的に行われることが特に必要である。
イ 本項においては、この時期の発達の特徴を踏まえ、乳児保育の「ねらい」及び「内容」については、身体的発達に関する視点「健やかに伸び伸びと育つ」、社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」及び精神的発達に関する視点「身近なものと関わり感性が育つ」としてまとめ、示している。
ウ 本項の各視点において示す保育の内容は、第1章の2に示された養護における「生命の保持」及び「情緒の安定」に関わる保育の内容と、一体となって展開されるものであることに留意が必要である。
(2) ねらい及び内容
ア 健やかに伸び伸びと育つ
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力の基盤を培う。(ア) ねらい
① 身体感覚が育ち、快適な環境に心地よさを感じる。
② 伸び伸びと体を動かし、はう、歩くなどの運動をしようとする。
③ 食事、睡眠等の生活のリズムの感覚が芽生える。(イ) 内容
① 保育士等の愛情豊かな受容の下で、生理的・心理的欲求を満たし、心地よく生活をする。
② 一人一人の発育に応じて、はう、立つ、歩くなど、十分に体を動かす。
③ 個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めていく中で、様々な食品に少しずつ慣れ、食べることを楽しむ。
④ 一人一人の生活のリズムに応じて、安全な環境の下で十分に午睡をする。
⑤ おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じる。(ウ) 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
① 心と体の健康は、相互に密接な関連があるものであることを踏まえ、温かい触れ合いの中で、心と体の発達を促すこと。特に、寝返り、お座り、はいはい、つかまり立ち、伝い歩きなど、発育に応じて、遊びの中で体を動かす機会を十分に確保し、自ら体を動かそうとする意欲が育つようにすること。
② 健康な心と体を育てるためには望ましい食習慣の形成が重要であることを踏まえ、離乳食が完了期へと徐々に移行する中で、様々な食品に慣れるようにするとともに、和やかな雰囲気の中で食べる喜びや楽しさを味わい、進んで食べようとする気持ちが育つようにすること。なお、食物アレルギーのある子どもへの対応については、嘱託医等の指示や協力の下に適切に対応すること。イ 身近な人と気持ちが通じ合う
受容的・応答的な関わりの下で、何かを伝えようとする意欲や身近な大人との信頼関係を育て、人と関わる力の基盤を培う。(ア) ねらい
① 安心できる関係の下で、身近な人と共に過ごす喜びを感じる。
② 体の動きや表情、発声等により、保育士等と気持ちを通わせようとする。
③ 身近な人と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼感が芽生える。(イ) 内容
① 子どもからの働きかけを踏まえた、応答的な触れ合いや言葉がけによって、欲求が満たされ、安定感をもって過ごす。
② 体の動きや表情、発声、 喃なん語等を優しく受け止めてもらい、保育士等とのやり取りを楽しむ。
③ 生活や遊びの中で、自分の身近な人の存在に気付き、親しみの気持ちを表す。
④ 保育士等による語りかけや歌いかけ、発声や 喃なん語等への応答を通じて、言葉の理解や発語の意欲が育つ。
⑤ 温かく、受容的な関わりを通じて、自分を肯定する気持ちが芽生える。(ウ) 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
① 保育士等との信頼関係に支えられて生活を確立していくことが人と関わる基盤となることを考慮して、子どもの多様な感情を受け止め、温かく受容的・応答的に関わり、一人一人に応じた適切な援助を行うようにすること。
② 身近な人に親しみをもって接し、自分の感情などを表し、それに相手が応答する言葉を聞くことを通して、次第に言葉が獲得されていくことを考慮して、楽しい雰囲気の中での保育士等との関わり合いを大切にし、ゆっくりと優しく話しかけるなど、積極的に言葉のやり取りを楽しむことができるようにすること。ウ 身近なものと関わり感性が育つ
身近な環境に興味や好奇心をもって関わり、感じたことや考えたことを表現する力の基盤を培う。
(ア) ねらい
① 身の回りのものに親しみ、様々なものに興味や関心をもつ。
② 見る、触れる、探索するなど、身近な環境に自分から関わろうとする。
③ 身体の諸感覚による認識が豊かになり、表情や手足、体の動き等で表現する。(イ) 内容
① 身近な生活用具、玩具や絵本などが用意された中で、身の回りのものに対する興味や好奇心をもつ。
② 生活や遊びの中で様々なものに触れ、音、形、色、手触りなどに気付き、感覚の働きを豊かにする。
③ 保育士等と一緒に様々な色彩や形のものや絵本などを見る。
④ 玩具や身の回りのものを、つまむ、つかむ、たたく、引っ張るなど、手や指を使って遊ぶ。
⑤ 保育士等のあやし遊びに機嫌よく応じたり、歌やリズムに合わせて手足や体を動かして楽しんだりする。(ウ) 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
① 玩具などは、音質、形、色、大きさなど子どもの発達状態に応じて適切なものを選び、その時々の子どもの興味や関心を踏まえるなど、遊びを通して感覚の発達が促されるものとなるように工夫すること。なお、安全な環境の下で、子どもが探索意欲を満たして自由に遊べるよう、身の回りのものについては、常に十分な点検を行うこと。
② 乳児期においては、表情、発声、体の動きなどで、感情を表現することが多いことから、これらの表現しようとする意欲を積極的に受け止めて、子どもが様々な活動を楽しむことを通して表現が豊かになるようにすること。(3) 保育の実施に関わる配慮事項
ア 乳児は疾病への抵抗力が弱く、心身の機能の未熟さに伴う疾病の発生が多いことから、一人一人の発育及び発達状態や健康状態についての適切な判断に基づく保健的な対応を行うこと。イ 一人一人の子どもの生育歴の違いに留意しつつ、欲求を適切に満たし、特定の保育士が応答的に関わるように努めること。
ウ 乳児保育に関わる職員間の連携や嘱託医との連携を図り、第3章に示す事項を踏まえ、適切に対応すること。栄養士及び看護師等が配置されている場合は、その専門性を生かした対応を図ること。
エ 保護者との信頼関係を築きながら保育を進めるとともに、保護者からの相談に応じ、保護者への支援に努めていくこと。
オ 担当の保育士が替わる場合には、子どものそれまでの生育歴や発達過程に留意し、職員間で協力して対応すること。
2 1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容
(3) 保育の実施に関わる配慮事項
ウ 自我が形成され、子どもが自分の感情や気持ちに気付くようになる重要な時期であることに鑑み、情緒の安定を図りながら、子どもの自発的な活動を尊重するとともに促していくこと。
4 保育の実施に関して留意すべき事項
(1) 保育全般に関わる配慮事項
ア 子どもの心身の発達及び活動の実態などの個人差を踏まえるとともに、一人一人の子どもの気持ちを受け止め、援助すること。イ 子どもの健康は、生理的・身体的な育ちとともに、自主性や社会性、豊かな感性の育ちとがあいまってもたらされることに留意すること。
ウ 子どもが自ら周囲に働きかけ、試行錯誤しつつ自分の力で行う活動を見守りながら、適切に援助すること。
エ 子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応し、子どもが安定感を得て、次第に保育所の生活になじんでいくようにするとともに、既に入所している子どもに不安や動揺を与えないようにすること。
オ 子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるようにすること。
カ 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植え付けることがないようにすること。
(2) 小学校との連携
ア 保育所においては、保育所保育が、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し、幼児期にふさわしい生活を通じて、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うようにすること。イ 保育所保育において育まれた資質・能力を踏まえ、小学校教育が円滑に行われるよう、小学校教師との意見交換や合同の研究の機会などを設け、第1章の4の(2)に示す「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」を共有するなど連携を図り、保育所保育と小学校教育との円滑な接続を図るよう努めること。
ウ 子どもに関する情報共有に関して、保育所に入所している子どもの就学に際し、市町村の支援の下に、子どもの育ちを支えるための資料が保育所から小学校へ送付されるようにすること。
(3) 家庭及び地域社会との連携
子どもの生活の連続性を踏まえ、家庭及び地域社会と連携して保育が展開されるよう配慮すること。その際、家庭や地域の機関及び団体の協力を得て、地域の自然、高齢者や異年齢の子ども等を含む人材、行事、施設等の地域の資源を積極的に活用し、豊かな生活体験をはじめ保育内容の充実が図られるよう配慮すること。
これらを踏まえた上で、監査資料の確認内容である(ア)~(ク)が「指針」に基づているものかを確認していきます。
(ア)子どもの心身の発達や活動の実態など個人差に考慮した保育となっているか。
(イ)一人ひとりの子供の気持ちや行動を受け止めて、援助を行っているか。
ここで確認している事は「(ア)個人の発達等を考慮した保育」、「(イ)一人ひとりに対する援助」です。
この2つは指針の「4(1)ーア」に該当します。
そして、この「4(1)」は「保育全般に関わる配慮事項」とあるように、「保育の内容」の全般に関係するものです。それは言い換えると「保育の内容」の「基盤」となっていると言えるのではないでしょうか。
(ア)、(イ)はもとより、上記の引用文を確認すると随所に、「個人差」や「一人一人」等という文言が散見されます。
これまで以前の保育は、例えば子どもが「集団」の中で生活できるようになることが1つの目標とされていました。しかし今の時代、子ども自身の成長や、保護者の支援、地域環境など様々な要因が交わった結果、集団での生活の必要性や難しさなどが問われるようになってきたように思います。そのため「集団」ではなく、「個」としての成長や発達が重要視されるようになってきたと言えるでしょう。
勿論これだけではありませんが、それらが一つの要因として集団ではなく、特に「個」にフォーカスした確認内容になっているのではないでしょうか。
※これ以降の確認事項は、(ア)、(イ)で示したように「個」に基盤があるかを確認しているので、指針と対応しているかを確認するだけに留めます。
ウ 子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応するとともに、すでに入所している子どもに不安や動揺を与えないように配慮しているか。
→指針「4(1)ーエ」が相当。
エ 子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるよう配慮しているか。
→指針「4(1)ーオ」が相当
オ 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植え付けないよう配慮しているか。
→指針「4(1)ーカ」が相当
カ 乳児保育に当たっては,生育歴の違いに留意しつつ,欲求を適切に満たし,特定の保育士が応答的に関わるなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
→指針「1(3)ーイ」が相当
キ 3歳未満児の保育に当たっては,子どもの自我の育ちを見守り,情緒の安定を図りながら,自発的な活動を促していくなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
→指針「2(3)ーウ」が相当
ク 3歳以上児の保育に当たっては,保育所の保育が小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し,幼児期にふさわしい生活を通じて,創造的な思考や主体的な生活態度等の基礎を培うようにするなど,当歳児に応じた配慮を行っているか。
→指針「4(2)ーア」が相当
このように、8つの確認事項は指針に定められる「保育の内容」のいずれかに該当している事が分かります。
まとめ
今回の「保育の計画と内容 その②」では、保育の内容について8つの点から確認しています。
それらを踏まえて今回の「保育の計画と内容 その②」の要点は、次の1つになると言えるでしょう
①保育の内容は、保育所保育指針に基づかなければならない。
次回は、「保育の計画と内容 その③」について調べていきます。
備考
今回、保育の内容について新旧の保育所保育指針を読み返してみましたが、このあたりの内容については変更点を確認できませんでした。。。不思議なものです。