事務員の保育園日誌|複雑な保育園業務の改善方法を

保育園で働く事務員の日常や役立つスキル、業務の改善について紹介します!

【保育園業務解説!】監査資料から考える保育園における業務の義務性について  職員処遇「8:給与規程の整備及び給与支給状況」その③

今回は前回に引き続き、「8:給与規程の整備及び給与支給状況」を解説・紹介していきます。

 

第3回目の今回は(11)~(16)の項目までを紹介します。

 

(11)各種手当は、職員から挙証書類を添付した届け出を徴し、規程に基づいた認定を行っているか。また給与規程どおり支給されているか。

①期末勤勉手当(賞与)の支給に当たって、給与規程にない割増、減額等を行っていないか。

②勤勉手当(勤務成績反映分)の支給に当たって、勤務成績による調整を行っているか。

※「いる」の場合、勤務成績評価に関する記録を作成し保存しているか。

(12)時間外勤務命令簿は作成されているか。

(13)社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険労働者災害補償保険)等の加入は適正にしているか。

(14)退職金は遅滞なく適正に支払われているか。

(15)退職手当共済制度(独立行政法人福祉医療機構)に加入資格のある職員は全員加入しているか。

(16)出張は、旅費規程に基づいて適正に処理されているか。

さらにここに関係する書類が、

・勤務成績評価尹淳準表

・記録簿

・住居手当:住民票、建物登記簿、賃貸借契約書等、家賃証明書

通勤手当:住民長、通勤経路図等(住民票は他提出書類で確認できれば写しで可)

・扶養手当:住民票、所得証明書等

・超過勤務命令簿

・休日勤務命令簿

社会保険料振込通知控

・概算・増加概算・確定保険料一般拠出金申告書

・旅行命令簿

・復命書

・旅費請求書

・領収書

になります。そして対応する根拠法令が、

(11)・・・労働基準法第37条、労働基準法施行規則第20条

(12)・・・なし

(13)・・・健康保険法第3条、厚生年金保険法第6条、雇用保険法第5条、労働者災害補償保険法第3条

(14)、(15)・・・社会福施設職員等退職者手当共済事業の適正運用について(平成6年2月10日社援施第24条)、社会福祉施設職員等退職手当共済法第2条

(16)・・・なし

となります。それでは一つずつ確認していきます。

 

(11)各種手当は、職員から挙証書類を添付した届け出を徴し、規程に基づいた認定を行っているか。また給与規程どおり支給されているか。

 

まずは疑問点をおさらいします。

 

それでは、まずは法令を確認しましょう。

 

労働基準法

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働基準法施行規則

第二十条 法第三十三条又は法第三十六条第一項の規定によつて延長した労働時間午後十時から午前五時厚生労働大臣が必要であると認める場合は、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの間に及ぶ場合においては、使用者はその時間の労働については、第十九条第一項各号の金額にその労働時間数を乗じた金額の五割以上(その時間の労働のうち、一箇月について六十時間を超える労働時間の延長に係るものについては、七割五分以上)の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
② 法第三十三条又は法第三十六条第一項の規定による休日の労働時間午後十時から午前五時厚生労働大臣が必要であると認める場合は、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの間に及ぶ場合においては、使用者はその時間の労働については、前条第一項各号の金額にその労働時間数を乗じた金額の六割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ここでは時間外労働の際に支払われる賃金の割増等について定められます。

 

労働者が「労働時間を超えて労働した場合」や「法定休日に労働した場合」、「深夜時間帯に労働した場合」において、使用者に対し通常よりも多い賃金の支払いを義務付けています。

 

これを「割増賃金」と言い、いわゆる「超過勤務手当」や「残業手当」等にあたります。

 

ここで定められる割増賃金の種類と超過率は次のようになります。

  • 法定労働時間を超える労働(残業手当) 25%以上
  • 法定休日の労働(休日手当) 35%以上
  • 深夜労働(深夜手当) 25%以上

※複数の時間外労働が重なった場合、その計算利率も上がります。

 

このように「超過勤務手当」の支給において、適正な利率で計算し、支給しなければなりません。

 

ここで気になるのは通勤手当や扶養手当など、他の各種手当を支給する際の挙証書類の提出です。法第37条や施行規則第20条を確認しても書類の提出について定められていません。

 

それでは手当の支給に挙証書類は必要ないのでしょうか?

 

これには給与の算出する場合の「根拠」がポイントとなります。

 

給与を計算する際の注意点

例えば、ある職員に給与を支払う際、そこに付随する「超過勤務手当」を支給することになります。

この超過勤務手当を支給する際、超過時間を計算しないといけませんが、その「根拠」となるものは「残業時間」です。

そして、残業時間を証拠として残した書類が「出勤簿」等になります。

 

このように手当を計算した際の証拠となる書類が「挙証書類」と言われるものです。

 

では法令の観点から見ると、これはどこに定められていないのでしょうか?

実は、この根拠の必要性は労働基準法第89条に定められます。

労働基準法

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定計算及び支払の方法賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

ここでは就業規則を整備する際、賃金の支払いについて、その計算方法についても定める事が義務付けられています。

 

それはつまり、給与や各種手当を計算する際の根拠も定めておかなければならな、という事です。

 

当然ですが、この根拠となる書類についても給与規程に定めなかればなりません。

※例えば残業手当以外の手当を支給する際に必要な書類は以下の場合があります。

  • 通勤手当→住民票、地図(自宅から勤務地までの道筋が分かるもの)など
  • 扶養手当→住民票、母子手帳など
  • 住宅手当→住宅ローン契約書など

手当を支給する際の根拠となる資料が明確でないと、何を根拠にして支給したのかが第三者から見て分かりません。また監査や税務署はこうした根拠となる資料を見て、給与の支払いが適正か否かを判断します。

 

各種手当(※賞与を含む)を支給する際は、必ずその手当の根拠となる書類を用意しましょう。

 

(12)時間外勤務命令簿は作成されているか。

ここでは、時間外命令簿の作成について確認されます。

 

結論から言いますが、これは作成する必要はありません。

 

まず大前提として、使用者は労働者の勤務時間を把握しなければなりません

しかし、労働時間の把握について実際に定められている内容は「労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること」です。つまり、労働日の始業・就業時間をタイムレコーダー等で記録しておけば、改めて別に帳簿を用意する必要は無いという事です。

 

詳しくは、以前のブログに載せてありますので、ご覧ください。

 

dai-nakamura.com

 

(13)社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険労働者災害補償保険)等の加入は適正にしているか。

 

まずは「健康保険」について確認します。

健康保険法

(定義)

第三条 この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き被保険者となることができない

一 船員保険の被保険者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第二条第二項に規定する疾病任意継続被保険者を除く。)
二 臨時に使用される者であって、次に掲げるもの(イに掲げる者にあっては一月を超え、ロに掲げる者にあってはロに掲げる定めた期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く。)
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの
三 事業所又は事務所(第八十八条第一項及び第八十九条第一項を除き、以下単に「事業所」という。)で所在地が一定しないものに使用される者
四 季節的業務に使用される者(継続して四月を超えて使用されるべき場合を除く。)
五 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して六月を超えて使用されるべき場合を除く。)
六 国民健康保険組合の事業所に使用される者
七 後期高齢者医療の被保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十条の規定による被保険者をいう。)及び同条各号のいずれかに該当する者で同法第五十一条の規定により後期高齢者医療の被保険者とならないもの(以下「後期高齢者医療の被保険者等」という。)
八 厚生労働大臣健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者(健康保険の被保険者でないことにより国民健康保険の被保険者であるべき期間に限る。)
九 事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者(当該事業所に使用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に使用される者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該者と同種の業務に従事する当該通常の労働者。以下この号において単に「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者(一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い者をいう。以下この号において同じ。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからハまでのいずれかの要件に該当するもの
イ 一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。
ロ 報酬(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第四十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。
ハ 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。
2 この法律において「日雇特例被保険者」とは、適用事業所に使用される日雇労働者をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者又は次の各号のいずれかに該当する者として厚生労働大臣の承認を受けたものは、この限りでない。
一 適用事業所において、引き続く二月間に通算して二十六日以上使用される見込みのないことが明らかであるとき。
二 任意継続被保険者であるとき。
三 その他特別の理由があるとき。

ここでは「被保険者」、すなわち健康保険の加入に該当する者しない者を定めています。

 

まず、この「適用事務所」とは、「健康保険の適用を受ける事業所」を指し、保育園もこの適用事務所に該当します。(根拠法令「健康保険法第3条第3項のタ)

この適用事務所に「使用される者(=労働者)」と「任意摘要被保険者」は健康保険加入しなくてはなりません

 

反対に、該当しない被保険者は次の通りです。

  • 船員保険の被保険者(=他の医療保険に加入している者)
  • 所在地が一定しない事業所に使用される人
  • 国民健康保険組合の事業所に使用される人
  • 健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
  • 後期高齢者医療の被保険者等
  • 臨時に2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
  • 臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
  • 季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
  • 臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人

 

次に「厚生年金保険」について確認します。

厚生年金保険法

(適用事業所)
第六条 次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時五人以上の従業員を使用するもの
 
(~中略~)
 
タ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業
 
(~中略~)
 
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの
三 船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条に規定する船員(以下単に「船員」という。)として船舶所有者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第三条に規定する場合にあつては、同条の規定により船舶所有者とされる者。以下単に「船舶所有者」という。)に使用される者が乗り組む船舶(第五十九条の二を除き、以下単に「船舶」という。)
2 前項第三号に規定する船舶の船舶所有者は、適用事業所の事業主とみなす。
3 第一項の事業所以外の事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所とすることができる。
4 前項の認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(第十二条に規定する者を除く。)の二分の一以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければならない。
(被保険者)
第九条 適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする

この二つの法令を確認すると分かるように、厚生年金保年の適用事務所に保育園は該当し、かつ加入者は70歳未満と定められています。

次に「雇用保険」について確認します。

雇用保険法

(適用事業)
第五条 この法律においては、労働者が雇用される事業適用事業とする。
2 適用事業についての保険関係の成立及び消滅については、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号。以下「徴収法」という。)の定めるところによる。
ここでは、雇用保険の適用される事業について定められています。
ポイントは、雇用保険の適用が「人」ではなく「事業」に定められている所です。
つまり、雇用保険は原則として、事業に適用され、同時にその事業に雇用される者に適用されるという事が出来ます。
 
しかし、もちろん全ての人に適用される訳ではありません。
(適用除外)
第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない
一 一週間の所定労働時間二十時間未満である者(第三十七条の五第一項の規定による申出をして高年齢被保険者となる者及びこの法律を適用することとした場合において第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く。)
二 同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者(前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及びこの法律を適用することとした場合において第四十二条に規定する日雇労働者であつて第四十三条第一項各号のいずれかに該当するものに該当することとなる者を除く。)
三 季節的に雇用される者であつて、第三十八条第一項各号のいずれかに該当するもの
四 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
五 船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条に規定する船員(船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第九十二条第一項の規定により船員法第二条第二項に規定する予備船員とみなされる者及び船員の雇用の促進に関する特別措置法(昭和五十二年法律第九十六号)第十四条第一項の規定により船員法第二条第二項に規定する予備船員とみなされる者を含む。以下「船員」という。)であつて、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者(一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く。)
六 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの

ここで先ほどと同じように雇用保険に該当しない者が定められます。

  • 1週間の労働時間が20時間未満の者
  • 1つの事業所で31日以上の雇用が見込まれない者
  • 季節限定で雇用される者(スキー場や海水浴場で働く場合)
  • 学生の者(休学中や卒業後も定期的に働く事が見込まれる場合は該当)
  • 船員として働く場合や漁船で働く者
  • 国家公務員や地方公務員、国・地方自治体などの事業で雇われる者

基本的に雇用保険は事業に雇用される全ての者が適用対象者となりますが、ここで定められる者に関しては適用外になります。またここには書かれてありませんが、他にも個人事業主や会社の社長、役員等も適用外となります。

 

労働者災害補償保険

第三条 この法律においては、労働者を使用する事業適用事業とする。
② 前項の規定にかかわらず、国の直営事業及び官公署の事業労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)別表第一に掲げる事業を除く。)については、この法律は、適用しない。

ここでも先ほどの雇用保険と同じように、労働者災害補償保険が「」ではなく「事業」に適用されることが定めてあります。

 

ちなみに適用されない事業を「国の直営事業」、「官公署の事業」と定めています。

 

つまり労働者を1人でも使用する事業は、労災保険の適用事業とされ、その事業に従事する者は労災保険に適用されるという事です。

 

以上のように、各法令を調べてきましたが、結論として健康保険、厚生年金保険、雇用保険労働者災害補償保険には加入義務があります。また各種保険の適用・加入基準は「人」であったり「事業」であったり「場所」であったりと様々です。一度しっかりと把握しておいた方が良いでしょう。

 

(14)退職金は遅滞なく適正に支払われているか。

退職金の支払いにについて確認しています。

この退職金制度を定める事に義務性はありません。ただし、施設によっては就業規則等に定めている場合があります。その場合は、定められる内容に従って計算・支給しましょう。

 

(15)退職手当共済制度(独立行政法人福祉医療機構)に加入資格のある職員は全員加入しているか。

まずは疑問点のおさらいです。

※この(15)の確認事項は根拠法令の関係上、調べが十分ではありません。大変申し訳ありませんが、それをご理解の上でお読みください。

 

まずは法令を確認しましょう。

社会福祉施設職員等退職手当共済法

(定義)
第二条 この法律において「社会福祉施設」とは、次に掲げる施設をいう。
 
(~中略~)
 
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十五条第四項の規定による認可を受けた乳児院、母子生活支援施設、保育所児童養護施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設
 
(~中略~)
 
4 この法律において「申出施設等」とは、共済契約者が経営する社会福祉施設、特定社会福祉事業及び特定介護保険施設等以外の施設又は事業のうち当該共済契約者が機構に申し出たものであつて第四条の二第一項の規定により機構が承諾したものをいう。
5 この法律において「経営者」とは、社会福祉施設、特定社会福祉事業又は特定介護保険施設経営する社会福祉法人をいう。
6 この法律において「社会福祉施設等職員」とは、経営者に使用され、かつ、その者の経営する社会福祉施設又は特定社会福祉事業の業務常時従事することを要する者をいう。ただし、一年未満の期間を定めて使用される者(その者が一年以上引き続き使用されるに至つた場合を除く。次項ただし書及び第八項ただし書において同じ。)を除く。
7 この法律において「特定介護保険施設等職員」とは、経営者に使用され、かつ、その者の経営する社会福祉施設、特定社会福祉事業又は特定介護保険施設等の業務に常時従事することを要する者であつて社会福祉施設等職員以外のものをいう。ただし、一年未満の期間を定めて使用される者を除く。
8 この法律において「申出施設等職員」とは、共済契約者に使用され、かつ、その者の経営する社会福祉施設、特定社会福祉事業、特定介護保険施設等又は申出施設等(以下「共済契約対象施設等」という。)の業務常時従事することを要する者であつて社会福祉施設等職員又は特定介護保険施設等職員以外のものをいう。ただし、一年未満の期間を定めて使用される者を除く。
9 この法律において「退職手当共済契約」とは、経営者が、この法律の定めるところにより機構に掛金を納付することを約し、機構が、その経営者の使用する社会福祉施設等職員、特定介護保険施設等職員及び申出施設等職員について、この法律の定めるところにより退職手当金を支給することを約する契約をいう。
10 この法律において「共済契約者」とは、退職手当共済契約の当事者である経営者をいう。
11 この法律において「被共済職員」とは、共済契約者に使用される社会福祉施設等職員特定介護保険施設等職員及び申出施設等職員をいう。
12 社会福祉施設又は特定社会福祉事業の経営者に変更が生じた場合において、変更前の経営者がその変更時まで退職手当共済契約を締結しており、かつ、変更後の経営者がその変更時から退職手当共済契約を締結したときは、変更前の経営者に係る被共済職員で引き続き変更後の経営者に係る被共済職員となつたものは、変更前の経営者に係る被共済職員となつた時から引き続き変更後の経営者に係る被共済職員であつたものとみなす。
13 特定介護保険施設等又は申出施設等である施設又は事業の経営者に変更が生じた場合において、変更前の経営者がその変更時まで退職手当共済契約を締結しており、かつ、変更後の経営者がその変更時に当該施設又は事業について第三項又は第四項の規定による申出をしたときは、変更前の経営者に係る特定介護保険施設等職員又は申出施設等職員で引き続き変更後の経営者に係る被共済職員となつたものは、変更前の経営者に係る被共済職員となつた時から引き続き変更後の経営者に係る被共済職員であつたものとみなす。

ここでは社会福祉施設職員等退職手当共済法における各「定義」について定められています。しかしよく読んでみると、ここで「退職手当共済制度」への加入は義務として定められていません。

 

法令の他条や施行規則等も確認しましたが、加入に関する義務を定めてある文言はありませんでした。

 

では、加入義務は無いのでしょうか?

 

実は、この退職手当共済制度について加入義務はありません

ただし、注意が必要です。

 

個人が加入する制度ではない

加入する義務がないと言いましたが、加入資格のある職員は加入しなくてはなりません。

 

矛盾しているように見えますが、一体どういう事でしょうか?

 

ポイントは「」が加入するのかです。

この退職手当共済制度は、職員個人で加入するものではありません

職員の所属する法人として加入するのか、加入しないか。その選択を任意で行う事が出来ます。

 

つまり、職員が退職手当共済制度へ加入する以前に、法人として退職手当共済制度に加入しているか否かがポイントとなるのです。

 

この制度に法人として加入している場合、経営者に使用される社会福祉事業等に従事している職員の内、加入資格(1年未満の期間の定めの無い者など)のある者には、加入義務があります。

反対に、法人としてこの制度に加入していない場合、そもそも職員は加入することすら出来ません。

 

この内、加入資格のある職員について、「独立行政法人福祉医療機構」は上記の法第2条を根拠に次のように定めています。

加入要件を満たす職員は、非常勤職員、嘱託職員及びパート労働者等を含め全員加入させなければなりません。

①雇用期間に定めのない職員(いわゆる正規職員)は、採用日から加入

②労働時間が就業規則で定める正規職員の所定労働時間の3分の2以上で、1年以上の雇用期間を定めて使用される職員は、採用日から加入。

③労働時間が就業規則で定める正規職員の所定労働時間の3分の2以上で、1年未満の雇用期間を定めて使用され、その期間の更新により引き続き1年を経過した職員は、採用から1年を経過した日から加入

ここでは原則として、加入資格のある職員全員が加入しなければならないと定めてあります。さらにそこから細かい加入条件を定めています。このうちのどれかに該当する職員は、退職手当共済制度に加入しなくてはなりません

 

正直この退職共済に関する制度についてはよく分からない。。。

正直、法第2条を確認しただけでは、ここまで分かりませんでした。

そもそも、こんな細かい加入要件が法第2条のどこに定めてあったのかは甚だ疑問です。しかし「東京都福祉保健局」のホームページを見て、さらに福祉医療機構へ電話をしたことで分かった事です。

 

恥ずかしながら僕自身、この退職手当共済制度の加入は義務だと思っていましたが、加入に関して前提条件があった事は知りませんでした。

 

またお気づきの方もいるかと思いますが、根拠法令の1つである「社会福施設職員等退職者手当共済事業の適正運用について(平成6年2月10日社援施第24号)」について、ここで紹介していません。

 

理由は「見つからなかった」からです。

正確には、この通知に付随している別紙が見つかりませんでした。

色々な角度から調べてみたのですが、どうしても見つからなかったので、今回は省略します。もしこの通知や別紙についてご存知の方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡いただければ幸いです。

 

(16)出張は、旅費規程に基づいて適正に処理されているか。

ここでは出張に関して発生する費用の支給等について確認されます。

 

通常、出張の際に発生した費用(宿泊費、移動費、日当)は、後日、会社等で精算・支給がなされます。ただし、会社によっては事前に費用を支給する場合もありますので、一概に事後精算という訳ではありません。

 

会社、施設によって実態は異なりますので、出張前に確認しておくことが大切です。

 

この出張旅費が、旅費規程に基づき支給されているのかを確認しているだけですので、素直に現状を答えましょう。

 

まとめ

「給与規程の整備及び給与支給状況 その③」では、各種手当支払いの際の注意点、各種保険への加入義務、退職金等について確認されました。

 

それらを踏まえて今回の「給与規程の整備及び給与支給状況 その③」の要点は、次の3つになると言えるでしょう。

①各種手当の支給の際には、支給の基となる証拠書類を必ず準備する

②各種保険には、加入義務のある者は必ず加入しなければならない

③退職手当共済への加入は、施設によって異なる

 

次回は「衛生管理者等」について調べていきます。