事務員の保育園日誌|複雑な保育園業務の改善方法を

保育園で働く事務員の日常や役立つスキル、業務の改善について紹介します!

【保育園業務解説!】監査資料から考える保育園における業務の義務性について  児童処遇「2:保育の計画と内容」その①

前回は「1:定員管理」について解説・紹介しました。

今回は「2:保育の計画と内容」を解説・紹介していきます。

 

今回は計13個の項目に沿って調べられますので、複数回に分けて紹介・解説していきます。

今回は(1)(2)の項目を紹介します。

 

(1)全体的な計画

 各保育所の保育の方針や目標に基づき、保育の目標を達成するための「全体的な計画」が作成されているか。

 全体的な計画の編成において、どのような点に創意工夫を行っているか。※創意工夫している内容

(2)指導計画

 全体的な計画に基づき指導計画が作成されているか。

長期的計画(年間、月間、その他(   ))

短期的計画(週案、日案、その他(   ))

 保育指針に基づき指導計画が展開されているか。

 発達過程に応じた保育がなされているか。なお、3歳未満児については、個別的な計画を作成しているか。

 長時間にわたる保育について、保育の内容や方法、職員の協力体制、家庭との連携等を指導計画に位置付けているか。

ここに対応する根拠法令が、

(1)、(2)・・・保育所保育指針第1章3

となります。それでは一つずつ確認していきます。

※根拠法令にはもう1つ、『保育所保育指針解説(以下、『指針解説』)』があります。しかし『指針解説』自体に法的義務や拘束力はありませんので、ここでは紹介しません。

 

 

(1)全体的な計画

ここでは「全体的な計画」について、2つの観点から確認しています。

 

ア 各保育所の保育の方針や目標に基づき、保育の目標を達成するための「全体的な計画」が作成されているか。

 

まずは疑問点を確認します。

それでは法令を調べていきましょう。

 

根拠となる法令は「保育所保育指針」になります。

保育所保育指針

3 保育の計画及び評価

(1) 全体的な計画の作成

 保育所は、1の(2)に示した保育の目標を達成するために、各保育所の保育の方針や目標に基づき、子どもの発達過程を踏まえて、保育の内容が組織的・計画的に構成され、保育所の生活の全体を通して、総合的に展開されるよう、全体的な計画作成しなければならない

 全体的な計画は、子どもや家庭の状況、地域の実態、保育時間などを考慮し、子どもの育ちに関する長期的見通しをもって適切に作成されなければならない。

 全体的な計画は、保育所保育の全体像を包括的に示すものとし、これに基づく指導計画、保健計画、食育計画等を通じて、各保育所が創意工夫して保育できるよう、作成されなければならない。

この「1の(2)」とは、「子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」ための「6つの目標」を指します。詳細は省きますが、ここではその「6つの目標」を達成する為に全体的な計画を作成すること義務付けています

 

さらに全体的な計画は「長期的見通し」に立って「子どもや家庭の状況」、「地域の実態」、「保育時間」を考慮し、かつ「指導計画」や「保健計画」、「食育計画」等に展開するものであると述べられます。

 

このように全体的な計画は、そこから派生する様々な「計画」のになると言えます。その為、作成の義務があるといえるのでしょう。

 

イ 全体的な計画の編成において、どのような点に創意工夫を行っているか。※創意工夫している内容の記載

 

ここでは全体的な計画の作成における、各施設の創意工夫について確認されています。

しかし創意工夫と言っても、何か特別な事を書く必要はありません

普段、自分たちが行っている保育を記入しましょう。

 

例えば「当園の保育理念である○○に基づき、子どもと保育者が一体となれる保育を実施している。例えば◇◇」的な感じです。

 

(2)指導計画

ここでは「指導計画」について、4つの観点から確認しています。

 

ア 全体的な計画に基づき指導計画が作成されているか。※長期的指導計画(年間、月間、その他:    ) 短期的指導計画(週案、日案、その他:    )

 

ここでは指導計画の作成について確認されます。

まずは疑問点の確認です。

それでは法令を確認していきましょう。

保育所保育指針

(2) 指導計画の作成

 保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開されるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画作成しなければならない

これを読むと分かるように、全体的な計画に基づき、子どもたちの生活や発達を見通した「長期的な指導計画」と、子どもたちの日々の生活に即した「短期的な指導計画」の作成が義務として定められています

 

また確認されている内容を見てみると、「長期的指導計画(年間、月間、その他)」、「短期的指導計画(週案、日案、その他)」と、指導計画の種類まで記載されています。このように長期的、短期的指導計画には少なくとも合計四種類の指導計画が存在している事になります。

 

ただし注意しなければならない点があります

 

法令を読むと分かるように、指導計画の作成において作成の義務は定められていますが、作成すべき計画書の種類作成頻度定めはありません

 

保育所保育指針に定められている事は「長期的指導計画」と「短期的指導計画」の作成のみです。言い換えると「年間計画」や「月間計画」、また「週案」や「日案」の作成については定められていません。つまり端的な例になりますが、「年間計画」を作成していれば、「月間計画」の作成は必要ないということになります。

 

また指導計画の作成頻度についても同じ事が言えます。

根拠法令である『保育所保育指針第1章3』を確認しても、各指導計画書の作成頻度に関する定めはありません。仮に毎週作成している週案を2週間に1回、4週間に1回の間隔で作成しても何ら問題ありません。さらに週案を作成している場合、日案を作成する必要はなくなります。

 

繰り返しになりますが、保育所保育指針に定められいる事は「長期的な指導計画」と「短期的な指導計画」の作成のみです。

 

イ 保育指針に基づき指導計画が展開されているか。

 

ここでは指導計画の展開について確認されています。

この「指導計画の展開」とは、どういう意味でしょうか?

まずは法令を確認しましょう。

(3) 指導計画の展開

指導計画に基づく保育の実施に当たっては、次の事項に留意しなければならない

 施設長、保育士など、全職員による適切な役割分担と協力体制を整えること

 子どもが行う具体的な活動は、生活の中で様々に変化することに留意して、子どもが望ましい方向に向かって自ら活動を展開できるよう必要な援助を行うこと

 子どもの主体的な活動を促すためには、保育士等が多様な関わりをもつことが重要であることを踏まえ、子どもの情緒の安定や発達に必要な豊かな体験が得られるよう援助すること。

 保育士等は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化などに即して保育の過程を記録するとともに、これらを踏まえ、指導計画に基づく保育の内容の見直しを行い、改善を図ること

ここでは保育指針を基底とした指導計画に基づく保育を実施する場合、4つの事項に留意する事が記されています。

 

この「留意」自体には「義務性」・「拘束性」を有する意味はありませんが、この4つの事項はよく読むと、保育の実施における前提条件であると言えるでしょう。そのため、この4つは法的な義務性はなくとも、保育園において実施する保育の根底にあるもと考えておきましょう。

 

話は逸れましたが、ここでの確認事項は保育指針に基づいた指導計画の展開、つまり実施している保育の内容を記載する事です。

 

ここも難しく考える必要はなく、各園で実施している保育が指導計画に基づいているか否かを書きましょう。ただし繰り返しになりますが、保育を実施する際には先ほどの留意事項に気を付けなければなりません。

 

ウ 発達過程に応じた保育がなされているか。なお、3歳未満児については、個別的な計画を作成しているか。

 

ここでは「発達過程に応じた保育」の実施と「3歳児未満の個別的な計画の作成」の2つについて確認されています。

 

まず「発達過程に応じた保育」の実施です。

これは次の3つの事項であるとされています。

(ア) 3歳未満児については、一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して、個別的な計画を作成すること。
(イ) 3歳以上児については、個の成長と、子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮すること。
(ウ) 異年齢で構成される組やグループでの保育においては、一人一人の子どもの生活や経験、発達過程などを把握し、適切な援助や環境構成ができるよう配慮すること。

細かい内容については置いておきますが簡単に言うと、保育園において保育を実施する際には『個人の成長や発達、また年齢等に合わせた保育を行う必要がある』と言えるでしょう。そうした点を考慮した保育の実施がなされているかを確認しています。

 

注意すべきは次の「3歳児未満の個別的な計画の作成」です。

根拠法令を確認すると次のようにあります。

(2) 指導計画の作成

(~中略~)

 指導計画の作成に当たっては、第2章及びその他の関連する章に示された事項のほか、子ども一人一人の発達過程や状況を十分に踏まえるとともに、次の事項に留意しなければならない。

(ア) 3歳未満児については、一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して、個別的な計画を作成すること

(~以下略~)

これは、先ほどの(2)のアで確認した根拠法令の続きになります。

一読して分かるように、3歳児未満の児童については個別的に指導計画を作成する義務があります。つまり未満児がいれば、その人数分の指導計画を作成しなくてはなりません。

 

しかし、ここでも作成の義務は定められてありますが、作成の頻度については義務付けられていません。

 

法令で作成が義務付けられている以上、作成をしないという選択肢はありません。

 

経験のある方ならお分かりになると思いますが、個別に指導計画を作成するのは非常に大変です。保育園における指導計画は実際に提供する保育の基になるものですので、重要であることには変わりません。しかし、実際に保育を提供している職員の負担軽減の観点からみるならば、指導計画の削減を検討・実施してもいいのではないかと思っています。

 

ともかく、指導計画の作成頻度等については各施設の判断に拠ることを覚えておきましょう。

 

エ 長時間にわたる保育について、保育の内容や方法、職員の協力体制、家庭との連携等を指導計画に位置付けているか。

 

ここでは作成している指導案に、「長時間にわたる保育」への対応が書かれているかを確認しています。ここも難しく考えることなく、指導案に長時間にわたる保育への対応が記載されているか否かを書きましょう。

 

しかし、そもそも「長時間にわたる保育」とは何のことでしょうか?

監査資料を確認すると「チェックポイント」には、次のようにあります。

延長保育夜間保育など保育時間の長い保育においては、担当する複数の保育士等が1日の保育の流れを把握した上で、子どもにふさわしい対応ができるよう、保育のねらいや内容等について理解を共有して取組むことが重要である。

つまり「長時間にわたる保育」とは、「延長保育夜間保育」を含めた保育であると言えます。

 

現在は保護者の就労等の関係によって、保育園の開所時間を過ぎた保育(=延長保育)や一時預かり保育、夜間保育などを実施する園が増えてきました。そうした世間の状況に保育園として対応していく為には「通常時間の保育」に対応した指導計画だけではなく、「長時間にわたる保育」も考慮した指導計画の作成が必要になってきたのでしょう。

 

まとめ

今回の「保育の計画と内容 その①」では、全体的な計画や指導計画の作成、またそれらを基にした保育の実施について確認されました。

 

それらを踏まえて今回の「保育の計画と内容 その①」の要点は、次の4つになると言えるでしょう

全体的な計画の作成は、その他の計画の基となっているので作成義務がある
②指導計画には作成の義務がある。しかしその作成頻度や種類については各施設の判断に拠る。未満児も同様。
③指導計画の展開における保育の実施には、4つの留意事項が存在している。
④昨今の家庭状況を鑑みて、指導計画は延長保育や夜間保育の実施を見据えて作成する事が重要である。

 

次回は、「保育の計画と内容 その②」について調べていきます。