事務員の保育園日誌|複雑な保育園業務の改善方法を

保育園で働く事務員の日常や役立つスキル、業務の改善について紹介します!

【保育園業務解説!】監査資料から考える保育園における業務の義務性について  児童処遇「2:保育の計画と内容」その⑦

前回は「2:保育の計画と内容 その⑥」について解説・紹介しました。

今回は「2:保育の計画と内容 その⑦」を解説・紹介していきます。

 

※ここでは計13個の項目に沿って調べられますので、複数回に分けて紹介・解説していきます。

今回は(9)の項目を紹介・解説します。

 

(9)疾病等への対応

 体調不良、傷害の発生、慢性疾患の子どもに対しては、嘱託医やかかりつけ医等と相談し、適切に対応しているか。

 子どもの疾病等の事態に備え、医務室等の環境を整え、救急用の薬品、材料等を常備し、適切に対応しているか。

 アレルギー疾病をもつ子どもについては、保護者と連携し、医者の診断および指示に基づいて、適切に対応しているか。

 乳幼児突然死症候群SIDS)の事故防止に配慮しているか。

 感染症やその他の疾病の発生防止に努めているか。

(1)感染症及び食中毒マニュアルを作成しているか。

(2)感染症にかかる研修を実施しているか。

 感染症の疑いのある場合には、嘱託医の指示を受けるとともに、保護者との連携を密にし、医務室等にて他の子どもと接触することのないように配慮したり、消毒を行ったりするなど、適切な処置を行っているか。

 感染症にかかった子どもの登所の再開に際しては、出席停止期間を守るよう保護者に協力を求めているか。

 職員や来訪者の健康状態によっては、利用者との接触を制限するなどの措置を講じているか。また、職員に対し、年1回以上の衛生管理に関する研修を行っているか。

 食中毒対策が適切に行われているか。

そして対応する根拠法令ですが、全ての法令が何かしらの形で対応しています。そのため次のような形になります。

保育所保育指針第3章1ー(3)、3

児童福祉施設最低基準第10条第2項、4項

・鹿児島県児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例第14条第2項、第14条第4項

保育所における感染症対策ガイドライン(H30.3厚生労働省

社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について(H17.2.22児発第0222001号)

・学校保健安全法第19条

・学校保健安全法施行規則等第19条

保育所保育指針第3章3ー(1)

保育所保育指針解説第3章1ー(3)

それでは確認していきましょう。

※関係書類の記載はありませんでした。

 

(9)疾病等への対応

ここでは「疾病等への対応」として、9つの観点から確認しています。

 

ア 体調不良、傷害の発生、慢性疾患の子どもに対しては、嘱託医やかかりつけ医等と相談し、適切に対応しているか。

ここでは疾病等を有する子どもへの対応について確認しています。

疑問点もありませんので、法令を確認します。

 

保育所保育指針

第3章 健康及び安全 1 子どもの健康支援

(3) 疾病等への対応
 保育中に体調不良や傷害が発生した場合には、その子どもの状態等に応じて、保護者に連絡するとともに、適宜、嘱託医子どものかかりつけ医等と相談し、適切な処置を行うこと。看護師等が配置されている場合には、その専門性を生かした対応を図ること。

(~以下略~)

まず、保育中に子どもが体調不良や怪我等を負った場合、「保護者への連絡」及び「嘱託医」や「子どものかかりつけ医に相談し、「適切な処置」を行う事が義務付けられています。また看護師等配置されている場合は、その専門性を生かした対応を行う事が義務付けられています

 

注意したいことは、体調不良等が発生した場合に「嘱託医」や「かかりつけ医」に相談しなければならないという事ではありません。子どもの症状に合わせて対応するという事です。

 

もし子どもに持病の疾病等があれば、事前に保護者から確認している子どもの「かかりつけ医」に相談する事が適当だと言えるでしょう。他にも発熱や頭痛などは「嘱託医」に相談、と言うように症状や状態などに合わせて対応していく事が重要です。

 

他にも以前の園で起きた傷害等としては、午睡中に脱臼した子どもは「整形外科」に連れていきました。また友達との喧嘩で目を叩かれた子どもは「眼科」に連れていったりしました。

 

このように状況や症状によっては「嘱託医」や「かかりつけ医」では対応しきれない怪我等があります。その為、施設では複数の病院等を把握しておくことで、幅広く子どもの疾病等に対応できるようになると言えるでしょう。

 

イ 子どもの疾病等の事態に備え、医務室等の環境を整え、救急用の薬品、材料等を常備し、適切に対応しているか。

ここでは子どもの疾病等に対応するための環境・薬品・材料等の整備や運用について確認しています。まずは法令を確認します。

 

保育所保育指針

第3章 健康及び安全 1 子どもの健康支援

(3) 疾病等への対応

(~中略~)

 子どもの疾病等の事態に備え医務室等の環境を整え、救急用の薬品、材料等を適切な管理の下に常備し、全職員が対応できるようにしておくこと。

ここでは、子どもの疾病等に対応できるように、医務室等の環境、薬品、材料等の整備し、かつ全職員が子どもの疾病等に対応できるようにしておくことが義務付けられています

 

さらに「環境」の整備や「事故防止(=安全対策)」については別に記載されています。

保育所保育指針

3 環境及び衛生管理並びに安全管理

(1) 環境及び衛生管理

 施設の温度、湿度、換気、採光、音などの環境を常に適切な状態に保持するとともに、施設内外の設備及び用具等衛生管理努めること

 施設内外の適切な環境の維持に努めるとともに、子ども及び全職員が清潔を保つようにすること。また、職員は衛生知識の向上努めること

 

(2) 事故防止及び安全対策

 保育中の事故防止のために、子どもの心身の状態等を踏まえつつ、施設内外の安全点検に努め、安全対策のために全職員の共通理解体制づくりを図るとともに、家庭や地域の関係機関の協力の下安全指導を行うこと

 事故防止の取組を行う際には、特に、睡眠中プール活動水遊び中食事中等の場面では重大事故が発生しやすいことを踏まえ、子どもの主体的な活動を大切にしつつ施設内外の環境の配慮指導の工夫を行うなど、必要な対策を講じること

 保育中の事故の発生に備え、施設内外の危険箇所の点検訓練を実施するとともに、外部からの不審者等の侵入防止のための措置や訓練など不測の事態に備えて必要な対応を行うこと。また、子どもの精神保健面における対応留意すること

(1)では施設の「環境」について、「適切な状態に保持する」ことや「設備及び用具等」の衛生管理、また環境・生活感の維持、職員の衛生知識の向上が努力義務として定めてあります。

 

(2)では、事故防止(=安全対策)について定められています。

事故防止には、様々な対策・対応があります。一言でまとめる事は難しいですが、重要な以下の点があります。

  • 施設内外の安全点検
  • 施設内外の危険個所の点検及び把握
  • 安全対策の為の共通理解・把握・訓練

そして、これらを全職員が共通理解するとともに、家庭や地元の関係機関との協力体制を構築することも大切です。

 

また「睡眠中プール活動水遊び中食事中等」と重大事故の発生場面を具体的に記載してある点には注意しましょう。

 

※努力義務とは、「努力することが義務付けられている」ことを言います。

つまり、物事の達成・完遂が義務付けられているわけではありません。ただし、安全確保の観点から、努力義務であっても「義務」という位置づけで捉えておくことが望ましいと言えるでしょう。

 

ウ アレルギー疾病をもつ子どもについては、保護者と連携し、医者の診断および指示に基づいて、適切に対応しているか。

ここではアレルギー疾患を持つ子供への対応について確認しています。

まずは法令を確認します。

 

保育所保育指針

1 子どもの健康支援

(3) 疾病等への対応

(~中略~)

 アレルギー疾患を有する子どもの保育については、保護者と連携し、医師の診断及び指示に基づき適切な対応を行うこと。また、食物アレルギーに関して、関係機関と連携して、当該保育所の体制構築など、安全な環境の整備を行うこと。看護師や栄養士等が配置されている場合には、その専門性を生かした対応を図ること。

(~以下略~)

ここではアレルギー疾患を有する子どもへの対応が記載されています。

重要な点は「保護者との連携」及び「医師の診断及び指示」に基づく事です。言い換えると、施設の独断で判断してはいけないと言えるでしょう。

 

また食物アレルギーへの対応は「関係機関との連携」とありますが、これも先ほどと同様で「保護者」や、かかりつけ医などの「医師」との連携であると言えるます。さらに施設では「安全な環境の整備」とあるように、アレルギー物の給食等への混入を防止することも定められている点には注意ましょう。

 

またここには記載されていませんが、こうしたアレルギー疾患を有する子どもの状態等を全職員が把握する事は、子どもの健康支援や安全対策の観点から必須事項と言えるでしょう。

 

与薬の注意点

疾病等への対応としては「適切な対応を行うこと」という表現に留まっています。

しかし、実際に施設では子どもへの与薬を行う場面が多々あります。僕自身も以前の保育園において、与薬を行う場面を見てきました。

 

この「与薬」について、法令ではどのように定められているのでしょうか。別の法令から確認します。

保育所保育指針

第3章 健康及び安全

1 子どもの健康支援

(3) 疾病等への対応

 子どもの疾病等の事態に備え、医務室等の環境を整え、救急用の薬品、材料等を適切な管理の下に常備し、全職員が対応できるようにしておくこと。

 

児童福祉施設最低基準

(衛生管理等)
第十条

 児童福祉施設には、必要な医薬品その他の医療品を備えるとともに、それらの管理を適正に行わなければならない。

保育所保育指針」、「児童福祉施設最低基準」ともに、「医薬品」の適正な管理について定めてありますが、「保育所保育指針」では、さらに「子どもの疾病等」に対応することが前提となっているように思われます。

 

つまり、施設における「医薬品」の管理とは、「子どもの疾病等」に対応する為であると言えるでしょう。

 

しかし、上記に挙げた法令を確認すると分かるように、「与薬」に関する正確な定めは無いように見えます。これはどのように考えればいいのでしょうか?

 

これについては、保育所保育指針解説から考えていきましょう。

※あくまで考え方の一つとして参照します。

保育所保育指針解説

第3章1ー(3)

⑤与薬に関する留意点
保育所において子どもに薬(座薬等を含む。)を与える場合は、医師の診断及び指示による薬限定する。その際は、保護者医師名薬の種類服用方法等具体的に記載した与薬依頼票持参させること必須である。

保護者から預かった薬については、他の子どもが誤って服用することのないように施錠のできる場所に保管するなど、管理を徹底しなくてはならない

また、与薬に当たっては、複数の保育士等で、対象児を確認し、重複与薬や与薬量の確認、与薬忘れ等の誤りがないようにする必要がある。与薬後には、子どもの観察を十分に行う

これに依るならば、施設において子どもに「与薬」を行う場合、その「薬」は「医師の診断及び指示による薬」に限定されます。さらにその薬の取扱い等を記載した指示書(=与薬依頼票)を保護者が記載し、持参させることを必須としている点には注意が必要です。

 

発熱している子どもに、職員が市販の解熱剤等を飲ませることは、その子の健康安全の点から正しい事かもしれません。しかし医学知識と免許のない”素人”が、素人の判断で与薬を行い、もし副作用が表れてしまった場合、どうすればいいのでしょうか?

良かれと思ってとった行動が、子どもの生命を脅かすことに繋がってしまう恐れがあります。

 

保育所保育指針等の法令では、「与薬」について明確な定めはありません。

しかし子どもの生命を守るという点から、施設や職員の独断で判断することがないようにしましょう。

※「与薬」は保育の専門外です。「与薬」を医師等の判断に拠る事は、子どもを守ると同時に施設の職員を守る事でもあります。

 

エ 乳幼児突然死症候群SIDS)の事故防止に配慮しているか。

ここでは乳幼児突然死症候群(以下、「SIDS」)の事故防止について確認しています。

この「SIDS」とは、なんでしょうか?

厚生労働省のHPには、次のようにあります。

  • SIDSは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なります。
  • 令和元年には78名の乳幼児がSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第4位となっています。
  • SIDSの予防方法は確立していませんが、以下の3つのポイントを守ることにより、SIDSの発症率が低くなるというデータがあります。

ここで示されているように「SDIS」とは、「何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気」とされています。さらに令和元年度だけでも「78名」の乳幼児が無くなっている病気であることが分かります。

 

さらにこの病気には「予防方法が確立していません」とあります。

これでは施設では予防・対応のしようがないと考えてしましますが、厚生労働省では「SDISの発症率」が低くなる3つのポイントを以下のように紹介しています。

  • 1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせる
  • できるだけ母乳で育てる
  • たばこをやめる

1つずつ確認してみましょう。

 

① 1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせる

SIDSは、うつぶせ、あおむけのどちらでも発症しますが、寝かせる時うつぶせに寝かせたときの方がSIDSの発生率が高いということが研究者の調査からわかっています。医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせましょう。この取組は、睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも有効です。

厚生労働省HP「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」

 

② できるだけ母乳で育てる

母乳育児が赤ちゃんにとっていろいろな点で良いことはよく知られています。

母乳で育てられている赤ちゃんの方がSIDSの発生率が低いということが研究者の調査からわかっています。できるだけ母乳育児にトライしましょう。

※同上

 

③ たばこをやめる

たばこSIDS発生の大きな危険因子です。

妊娠中の喫煙はおなかの赤ちゃんの体重が増えにくくなりますし、呼吸中枢にも明らかによくない影響を及ぼします。妊婦自身の喫煙はもちろんのこと、妊婦や赤ちゃんのそばでの喫煙はやめましょう。これは、身近な人の理解も大切ですので、日頃から喫煙者に協力を求めましょう。

※同上

3つのポイントの内、「」と「」については、家庭での判断が前提にあります。

 

しかし「」は施設で対応できることです。

繰り返しになりますが、この「SDIS」は原因が分かっておらず、また予防方法が確立している訳でもありません。しかし発生率を下げる(=児童の命を守る)という観点から「」のポイントについては保育所施設等で対応していく必要があると言えるでしょう。

 

オ 感染症やその他の疾病の発生防止に努めているか。

ここでは感染症やその他の疾病等の発生防止対策について、次の2つの事項から確認しています。

(1)感染症及び食中毒マニュアルを作成しているか。

(2)感染症にかかる研修を実施しているか。

1つずつ確認していきましょう。

 

(1)感染症及び食中毒マニュアルを作成しているか。

ここでは感染症及び食中毒マニュアルの作成について確認しています。

そもそも、こうした感染防止マニュアル等の作成は義務なのでしょうか。

 

保育所における感染症対策ガイドライン」には次のように記載があります。

保育所における感染症対策ガイドライン(H30.3厚生労働省

4.感染症対策の実施体制 
保育所における感染症の予防と対策には、子どもの年齢と予防接種の状況、子どもの抗菌薬の使用状況、環境衛生、食品管理の状況、施設の物理的空間と機能性、子どもと職員の人数(割合)、それぞれの職員の衛生管理と予防接種の状況等のあらゆるものが関与します。


保育所における感染症対策の実施に当たっては、施設長のリーダーシップの下全職員が連携・協力することが不可欠です。保育士、看護師、栄養士、調理員等の各職種の専門性を活かして、保育所で作成する保健計画等を踏まえ、保育所全体で見通しを持って取り組むことが求められます。また、感染症発生時の対応に関するマニュアルを作成し、緊急時の体制や役割を明確にしておくとともに、保護者へ事前説明を行うことも大切です。さらに、各保育所において、保健計画等に基づき体系的、計画的に研修を実施し、職員の感染予防に関する知識の向上及び共有に努めることが重要です。 

このガイドラインでは、保育所における感染症の予防と対策には7つの点が関係していると指摘しています。その上で、保育所における感染症対策の実施には、「全職員の連携・協力」が必要不可欠であるとしています。

 

そして「全職員の連携・協力」について、各職員の専門性を活かしつつ「各保育所で作成する保健計画等」を踏襲し、さらに「感染症発生時の対応に関するマニュアルを作成し、緊急時の体制や役割を明確にしておく」事が重要であるとも指摘しています。

 

このように施設における感染対策では、全職員の連携や協力が前提になってきますが、その為には「緊急時の体制や役割を明確にしておく」必要があります。その為の手段として「マニュアル」が必要になるのであり、ここに「マニュアル」作成の義務があります。

 

※また「緊急時の体制や役割を明確にしておく」ための手段が「マニュアル」ですので、その点から言えば、感染症対策に限らず、不審者対策等緊急時のマニュアルの作成は義務と言えるのかもしれません。

 

(2)感染症にかかる研修を実施しているか。

ここでは感染症に関する研修の実施の有無について確認しています。

まずは法令を確認しましょう。

 

先ほどの、「保育所における感染症対策ガイドライン(H30.3厚生労働省)」4.感染症対策の実施体制 」を確認すると、次のような記載があります。

保育所における感染症対策ガイドライン(H30.3厚生労働省

4.感染症対策の実施体制 
保育所における感染症の予防と対策には、①子どもの年齢と予防接種の状況、②子どもの抗菌薬の使用状況、③環境衛生、④食品管理の状況、⑤施設の物理的空間と機能性、⑥子どもと職員の人数(割合)、⑦それぞれの職員の衛生管理と予防接種の状況等のあらゆるものが関与します。


保育所における感染症対策の実施に当たっては、施設長のリーダーシップの下に全職員が連携・協力することが不可欠です。保育士、看護師、栄養士、調理員等の各職種の専門性を活かして、各保育所で作成する保健計画等を踏まえ、保育所全体で見通しを持って取り組むことが求められます。また、感染症発生時の対応に関するマニュアルを作成し、緊急時の体制や役割を明確にしておくとともに、保護者へ事前説明を行うことも大切です。さらに、各保育所において保健計画等に基づき体系的、計画的に研修を実施し、職員の感染予防に関する知識の向上及び共有に努めることが重要です。 

先ほど確認したことは、感染症対策の一環としてマニュアルの作成が定められていたと言えます。さらにここでは、「職員の感染予防に関する知識の向上及び共有に努める」ために保健計画等に基づいた「研修」を実施することが重要であると記載しています。

 

ここで「努める事が重要」と記載があるように、研修の実施自体に義務性は無いと思われますが、感染予防の観点から職員会等で実施する事が望ましいかもしれません。

 

 感染症の疑いのある場合には、嘱託医の指示を受けるとともに、保護者との連携を密にし、医務室等にて他の子どもと接触することのないように配慮したり、消毒を行ったりするなど、適切な処置を行っているか。

ここでは利用者の感染症の疑いがある場合の対応について確認しています。

まずは法令を確認しましょう。

 

社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について(H17.2.22児発第0222001号)

社会福祉施設等においては、職員が利用者の健康管理上、感染症や食中毒を疑ったときは、速やかに施設長に報告する体制を整えるとともに、施設長は必要な指示を行うこと。

社会福祉施設等の医師及び看護職員は、感染症若しくは食中毒の発生又はそれが疑われる状況が生じたときは、施設内において速やかな対応を行わなければならないこと。また、社会福祉施設等の医師、看護職員その他の職員は、有症者の状態に応じ、協力病院を始めとする地域の医療機関等との連携を図るなど適切な措置を講ずること。

社会福祉施設等においては、感染症若しくは食中毒の発生又はそれが疑われる状況が生じたとき有症者の状況それぞれに講じた措置等を記録すること。

ここでは施設内で感染症等が疑われる状況が起きた場合の職員の対応について定められています。以下要点を挙げてみます。

感染症等が疑われる状況が発生した時◇

  1. 施設長に報告する体制づくり及び
  2. 施設長は状況に応じた指示を行う
  3. 医師又は看護士職員は、感染者の状況に応じて地域の病院に協力を仰ぎつつ、連携を図る
  4. 感染者の状況を記録する

この「社会福祉施設等の医師及び看護職員」とは、施設で業務提携等を結んでいる「嘱託医」も含まれます。

 

つまり感染症等の発生または疑いが発生した場合、まず「施設長」に報告し、指示を仰ぎます。それと同時に「社会福祉施設等の医師及び看護職員」や「嘱託医」に報告しますが、報告を受けた医師等は状況に応じて対応しなければなりません。

 

また施設側は、感染症等の疑われる者の症状等を記録しなければならない点に注意する必要があります。忘れずに記録するようにしましょう。

 

それでは法令の続きを確認します。

社会福祉施設等の施設長は、次の又はの場合は、市町村等の社会福祉施設等主管部局に迅速に、感染症又は食中毒が疑われる者等人数症状対応状況等を報告するとともに、併せて保健所に報告し、指示を求めるなどの措置を講ずること。

 同一の感染症若しくは食中毒による又はそれらによると疑われる死亡者又は重篤患者1週間内に2名以上発生した場合

 同一の感染症若しくは食中毒の患者又はそれらが疑われる者が10名以上又は全利用者の半数以上発生した場合

 及び該当しない場合であっても通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合

の報告を行った社会福祉施設等においては、その原因の究明に資するため、当該患者の診察医等と連携の上、血液、便、吐物等の検体を確保するよう努めること

の報告を受けた保健所においては、必要に応じて感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第15条に基づく積極的疫学調査又は食品衛生法(昭和22年法律第233号)第58条に基づく調査若しくは感染症若しくは食中毒のまん延を防止するために必要な衛生上の指導を行うとともに、都道府県等を通じて、その結果を厚生労働省に報告すること。

の報告を受けた市町村等の社会福祉施設等主管部局保健所は、当該社会福祉施設等に関する情報交換を行うこと。

またここでは、特定の状況が発生した場合の対応方法を定めています。

ここでいう特定の状況とは次の通りです。

  1. 感染症や食中毒、またはそれが原因と疑われる死亡者や重篤患者が1週間2名以上発生した場合
  2. 感染症や食中毒、またはそれらが疑われる者が10名以上または利用者の半数以上発生した場合
  3. 通常の感染症等の発生状況を上回る感染症等が発生した場合、または発生が疑われる場合。(※この場合は、施設長の判断による)

は理解しやすいと思います。とは、例えばコロナウイルス等が該当すると言えるでしょう。

 

それでは法令の続きを確認します。

社会福祉施設等においては、日頃から感染症又は食中毒の発生又はまん延を防止する観点から、職員の健康管理を徹底し、職員や来訪者の健康状態によっては利用者との接触を制限する等の措置を講ずるとともに、職員及び利用者に対して手洗いやうがいを励行するなど衛生教育の徹底を図ること。また、年1回以上、職員を対象として衛生管理に関する研修を行うこと。

.なお、医師が、感染症法、結核予防法(昭和26年法律第96号)又は食品衛生法の届出基準に該当する患者又はその疑いのある者を診断した場合には、これらの法律に基づき保健所等への届出を行う必要があるので、留意すること。

ここでは社会福祉施設が行うべき、感染症予防を4つ定めています。

  1. 職員の健康管理の徹底
  2. 職員や来訪者の健康状態の把握(場合によっては、利用者との接触を制限する)
  3. 職員や利用者の手洗い等、衛生教育の実施
  4. 年1回以上の衛生管理に関する研修の実施

」は衛生管理研修を実施する義務が定められます。特に「年1回以上」と研修会開催回数まで定められている点には注意しましょう。

 

法令が長かったので、3つに分けて確認してきました。再度、法令をもとに確認事項を見ていきたいと思います。

カ 感染症の疑いのある場合には、嘱託医の指示を受けるとともに、保護者との連携を密にし、医務室等にて他の子どもと接触することのないように配慮したり、消毒を行ったりするなど、適切な処置を行っているか。

法令では感染症等の疑いまたは状況が発生した場合、まずは「施設長」に報告し、指示を仰がなければなりません。そして同時に「嘱託医」にも報告します。

 

そこから「嘱託医」は、発生の状況を鑑みて指示を出します。施設側はその指示のもと対応していかなくてはなりません。この時の対応内容は「嘱託医」の指示を根拠とするものです。その為、その時の状況に応じて行動することになります。

 

つまり確認事項において確認されていることは、実際の対応よりも、感染症等の疑い等が発生した場合の施設側の初期対応、さらに各関係機関との連携を確認していると言えます。さらにこの時の状況を記録する事も義務付けられている点には注意しましょう。

 

 感染症にかかった子どもの登所の再開に際しては、出席停止期間を守るよう保護者に協力を求めているか。

ここでは感染症等に罹患した子どもの登園について、保護者への協力の有無を確認しています。

まずは法令を確認しましょう。

学校保健安全法

(出席停止)

第十九条 校長は、感染症にかかつておりかかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより出席を停止させることができる

これは小学校の保健安全に関する法令です。出席停止期間等に関する法令はこの「学校保健安全法」を根拠にしています。

 

これを保育園に置き換えると、施設長は児童等が感染症に感染、または感染の疑い、またはこれから感染する恐れのある場合、政令を根拠として、園児等の出席を停止させることが出来るとしています。

 

このように施設長は、感染症の疑い等がある園児の出席を停止させることが出来ます。では、大体どれくらいの期間の出席を停止する事ができるのでしょうか?

以下、一例を紹介ます。

※この「政令」の内容については備考に記載しておきます。気になる方はご確認ください。

エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう等、第一種の感染症に感染等した場合→治癒するまで(=完治するまで)

◇インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、百日咳せき、麻しん、流行性耳下腺炎、風しん、水痘等、第二種の感染症に感染等した場合

→感染した感染症によって異なる。以下を参照

※インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)

→発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。

※百日咳せき

→特有の咳せきが消失するまで又は五日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで。

※麻しん

→解熱した後三日を経過するまで。

流行性耳下腺炎

→耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹ちようが発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで。

感染症は種類も多く、また停止期間も異なります。また法令だけを確認しても文字ばかりで非常に分かりにくい印象です。保護者に協力を求める場合は、「感染症」と該当する「出席停止期間」の一覧表を作成する等しておくことが必要になります。

※根拠法令をもとに「感染症」とそれに対応する「出席停止期間」の一覧を作成しました。備考欄に載せておきますので「出席停止期間表」を作成する際などにご活用ください。

 

 職員や来訪者の健康状態によっては、利用者との接触を制限するなどの措置を講じているか。また、職員に対し、年1回以上の衛生管理に関する研修を行っているか。

先ほどの「」において確認したので、省略します。

 

ケ 食中毒対策が適切に行われているか。

ここでは食中毒対策について確認しています。

まずは法令を確認しましょう。

保育所保育指針

第3章 健康及び安全

3 環境及び衛生管理並びに安全管理

(1) 環境及び衛生管理
 施設の温度、湿度、換気、採光、音などの環境を常に適切な状態に保持するとともに、施設内外の設備及び用具等の衛生管理に努めること。

 施設内外の適切な環境の維持に努めるとともに、子ども及び全職員が清潔を保つようにすること。また、職員は衛生知識の向上に努めること。

ここでは健康安全として、環境、衛星管理等について確認しています。

 

直接的に食中毒対策について記載されていませんが、「」を見ると「施設内外の適切な環境の維持」、「子ども及び全職員が清潔を保つようにする」と記載されています。そもそも食中毒の原因細菌ウイルスなど様々です。そうした原因を取り除くための手段が「適切な環境の維持」や「清潔を保つ」ことだと言えるでしょう。

 

直接的に食中毒の予防について記載や定めはありませんが、施設内や職員、利用者が清潔を保つ事が、一番の食中毒対策になることを記載しているのでしょう。そうした観点から、食中毒対策の有無を確認しているのだと言えます。

 

まとめ

今回の「保育の計画と内容 その⑦」では、児童の健康管理として、健康診断の義務性や健康診断の実施、再検査や診断票の記録・保管等、使用するはかり等の検査について確認されました。

 

それらを踏まえて今回の「保育の計画と内容 その⑦」の要点は、次のになると言えるでしょう

①子どもの怪我や疾病等には適切に対応しなくてはならない。また怪我や疾病等に対応するための協力・連携体制、施設の環境整備等を整える。
②アレルギーをもつ園児に対しては、①に合わせて、「保護者との連携」、「園児のかかりつけ医を把握する」等、施設の内外との協力・連携体制を整える
与薬は、園の判断のみで与えない。必ず「保護者」の了承、「かかりつけ医」の診断を根拠に行う。
④SDIS防止の観点から、施設では満1歳になるまではあおむけで寝かせる
⑤保育中の怪我や疾病、感染症や食中毒対応の為のマニュアルを作成し、職員間で共有する
感染症等に罹患した園児に対しては、該当する期間の出席を停止するよう、保護者に協力を求める

 

次回は、「保育の計画と内容 その⑧」について調べていきます。

 

備考

感染症による出席停止期間一覧表

感染症による出席停止期間一覧表

 

学校保健安全法施行規則

感染症の種類)
第十八条 学校において予防すべき感染症の種類は、次のとおりとする。
 第一種 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、急性灰白髄炎ジフテリア重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)、中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)及び特定鳥インフルエンザ感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第三項第六号に規定する特定鳥インフルエンザをいう。次号及び第十九条第二号イにおいて同じ。)

 第二種 インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、百日咳せき、麻しん、流行性耳下腺炎、風しん、水痘、咽頭結膜熱、新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。次条第二号チにおいて同じ。)、結核及び髄膜炎菌性髄膜炎

 第三種 コレラ、細菌性赤痢腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第六条第七項から第九項までに規定する新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症は、前項の規定にかかわらず、第一種の感染症とみなす。

 

学校保健安全法施行規則

(出席停止の期間の基準)
第十九条 令第六条第二項の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。
 第一種の感染症にかかつた者については、治癒するまで。
 第二種の感染症結核及び髄膜炎菌性髄膜炎を除く。)にかかつた者については、次の期間。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りでない。
 インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。
 百日咳せきにあつては、特有の咳せきが消失するまで又は五日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで。
 麻しんにあつては、解熱した後三日を経過するまで。
 流行性耳下腺炎にあつては、耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹ちようが発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで。
 風しんにあつては、発しんが消失するまで。
 水痘にあつては、すべての発しんが痂か皮化するまで。
 咽頭結膜熱にあつては、主要症状が消退した後二日を経過するまで。
 新型コロナウイルス感染症にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、症状が軽快した後一日を経過するまで。
 結核髄膜炎菌性髄膜炎及び第三種の感染症にかかつた者については、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
 第一種若しくは第二種の感染症患者のある家に居住する者又はこれらの感染症にかかつている疑いがある者については、予防処置の施行の状況その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
 第一種又は第二種の感染症が発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。
 第一種又は第二種の感染症の流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。