前回は「8:給与規程の整備及び給与支給状況」について解説・紹介しました。
今回は「9:衛生管理者等」を解説・紹介していきます。
「衛生管理者等」について、次の3つの項目に沿って調べられます。
(1)衛生管理者、又は衛生推進者を選任しているか。
(2)衛生推進者等を選任した時は、その者を、作業場(事業所等)の見やすい箇所に掲示する等により、関係労働者に周知しているか。
(3)常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、衛生委員会は定期的に開催されているか。
さらにここに関係する書類が、
・衛生推進者の修了証書の写し
になります。そして対応する根拠法令が、
(1)・・・労働安全衛生法第12条、労働安全衛生法施行規則第4条
衛生管理者:労働安全衛生法第12条、同施行令第4条、同規則第7条
衛生推進者:労働安全衛生法第12条の2,同規則第12条の2
産業医:労働安全衛生法第13条、同施行令第5条、同規則第13条
衛生委員会:労働安全衛生法第18条、同施行令第9条
(2)・・・労働安全衛生規則第12条の4
(3)・・・労働安全衛生法第18条、労働安全衛生規則第22条、第23条
となります。それでは一つずつ確認していきます。
- (1)衛生管理者、又は衛生推進者を選任しているか。
- (2)衛生推進者等を選任したときは、その者を作業場(事業所等)の見やすい箇所に掲示する等により、関係労働者に周知しているか。
- (3)常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、衛生委員会は定期的に開催されているか。
- まとめ
(1)衛生管理者、又は衛生推進者を選任しているか。
はじめに疑問点をおさらいします。
まずは衛生管理者及び衛生推進者がどういった役職なのかを知らなければなりません。
調べてみると、次のような違いがある事が分かりました。
衛生管理者
常時50人以上の労働者を使用する事業場で、労働者の健康障害を防止などに関わる業務を担当する者
衛生推進者
常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で、労働者の安全や健康確保などに係わる業務を担当する者
事業場の規模によって呼び方は異なりますが、共通して「労働者の健康安全」等に関わる担当者であると言えるでしょう。
それでは関係法令を確認しましょう。
労働安全衛生法第12条
(衛生管理者)
第十二条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
ここでは「法令で定める規模の事業場ごと」に免許・資格を有する者から衛生管理者を選任し、衛生管理をさせなければならないとあります。さらにその業務内容については次のように定めています。
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
ただし注意しなければならないのは、「法令で定める規模の事業場ごと」とあるように、事業場の規模や場所によって衛生管理者の管理・設置は変わってくるという事です。
それでは、次の法令を確認しましょう。
労働安全衛生法施行規則第4条
(衛生管理者を選任すべき事業場)
第四条 法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
ここでは、先ほど紹介した法令第12条で定める「事業場」を、常時50人以上の労働者を使用している事業場と定めてあります。つまり、衛生管理者の設置義務のある事業場とは、常時50人以上の労働者を使用している事業場の事を指します。
それでは、この衛生管理者をどのように選任するのでしょうか?
労働安全衛生法規則第7条
(衛生管理者の選任)第七条 法第十二条第一項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。一 衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、二人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第十条第三号に掲げる者がいるときは、当該者のうち一人については、この限りでない。三 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。イ 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者ロ その他の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。事業場の規模(常時使用する労働者数):衛生管理者数
50人以上200人以下:1人
200人を超え500人以下:2人
500人を超え1000人以下:3人
1000人を超え2000人以下:4人
2000人を超え3000人以下:5人
3000人を超える場合:6人
ここでは衛生管理者の選任について、例えば以下の内容で定められています。
- 衛生管理者を設置しなければならない事態になってから14日以内で選任する事
- 原則、その事業場専属の衛生管理者を設置する事
- 衛生管理者を選任する場合、業種に応じて特定の資格や免許等を取得している事
- 事業場の規模によって、選任・設置する衛生管理者の数が異なる事
このように、衛生管理者の設置・選任に関する一連の事項には、全て義務性を有しており、かつその業務内容等は厳粛に決まっているのです。
それでは、次の「衛生推進者」について確認しましょう。
労働安全衛生法第12条の2
(安全衛生推進者等)
労働安全衛生規則第12条の2
(安全衛生推進者等を選任すべき事業場)
この2つの法令からも分かるように、「常時十人以上五十人未満」の労働者を使用している事業場では、「衛生推進者」を定めることが義務付けられています。さらに担当させる業務についても定めてあります。
以上のように法令をもとに「衛生管理者」、「衛生推進者」の設置義務、選任等について確認してきました。この2つの職種が担当する業務とは「労働者の健康安全管理」です。そして、それは事業場の規模に準じながら、選任・設置しなくてはなりません。
※他にも根拠法令には「産業医」について記述がありましたが、今回はあくまで「衛生管理者・推進者」に関する確認ですので省略します。
(2)衛生推進者等を選任したときは、その者を作業場(事業所等)の見やすい箇所に掲示する等により、関係労働者に周知しているか。
まずは疑問点をおさらいします。
まずは法令を確認しましょう。
労働安全衛生規則第12条の4
(安全衛生推進者等の氏名の周知)
ここで「安全衛生推進者等」とありますが、これは「衛生管理者」や「衛生推進者」等を指します。つまり、衛生管理者や衛生推進者等を選任した場合は、ここで定められるように、その者の氏名を事業場の見えやすい場所に掲示する等して、他の労働者に周知しなくてはならないのです。
(3)常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、衛生委員会は定期的に開催されているか。
まずは疑問点をおさらいしましょう。
まずは法令を確認しましょう。
労働安全衛生法第18条
(衛生委員会)第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者三 産業医のうちから事業者が指名した者四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。4 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。
ここでは衛生委員会の設置が義務付けられています。
注意したいのは、冒頭に定められている「政令で定める規模の事業場ごと」という点です。
当初、僕はこれを「衛生管理者や衛生推進者を選任している事業場」の事だと思っていました。しかし法令の確認を進めると、それは大きな間違いであったことが分かりました。それが労働安全衛生法施行令第9条に定められています。
労働安全衛生法第9条
(衛生委員会を設けるべき事業場)
第九条 法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
ここで先ほどの法第18条に定められる「法令で定める規模の事業場」を、「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」であると定めてあります。
つまり、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、必ず衛生委員会を設置しなくてはなりませんが、それ以下の労働者を使用している場合、その義務は生じません。この点には注意が必要です。
また法第18条では他にも、その委員会で審議すべき4つの事項や衛生委員会の構成メンバー等も定められてあります。しかし読んでみると分かるように、委員会の定期開催については定められていません。
2つ目の根拠法令である労働安全衛生規則第22条を調べてみても、そこには「衛生委員会の付議事項」として、委員会で審議すべき4つの事項に含まれる関係事項については定めてありますが、そこにも定期開催に関する事は定められてありません。
それでは委員会の定期開催については、どこに定められているのでしょうか?
この衛生委員会の定期開催については、労働安全衛生規則第23条に定められています。
労働安全衛生規則第23条
(委員会の会議)2 前項に定めるもののほか、委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める。3 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。一 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。二 書面を労働者に交付すること。三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。4 事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。一 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容二 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの5 産業医は、衛生委員会又は安全衛生委員会に対して労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができる。
ここで、衛生管理者や衛生推進者等の衛生委員会の開催について「毎月一回以上開催するようにしなければならない」と定められています。さらに開催した委員会で審議した内容の周知、また開催した委員会の内容を議事録として3年保存する等、委員会の開催に際し守るべき義務も定めてあります。
まとめ
「衛生管理者等」では、衛生管理者や衛生推進者の設置義務や選任、委員会の開催について確認されました。
それらを踏まえて今回の「衛生管理者等」の要点は、次の3つになると言えるでしょう。
①事業場の規模によって衛生管理者・衛生推進者を選任しなくてはならない。
②衛生管理者等が選任された場合、その事実の周知の義務がある。
③常時50名以上労働者を使用する事業場では、衛生委員会を設置し、月1回以上開催の義務がある。
次回は「職員の健康管理」について調べていきます。