事務員の保育園日誌|複雑な保育園業務の改善方法を

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【保育園業務解説!】監査資料から考える保育園における業務の義務性について  職員処遇「7:非常勤職員」

前回は「6:休暇等」について解説・紹介しました。

今回は「7:非常勤職員」を解説・紹介していきます。

 

非常勤職員」について、次の1つの項目に沿って調べられます。

(1)非常勤職員は労働条件を書面により明確にし、雇用しているか。

 (ア)非常勤職員の採用について、雇用伺いで決済を受けているか。

 (イ)現状と差異はないか。

 (ウ)賃金は契約どおりに支給しているか。

さらにここに関係する書類が、

・労働条件通知書

になります。そして対応する根拠法令が、

(1)・・・・・労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条、労働基準法施行規則第5条第1項第1号の2、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)第6条、パートタイム労働法施行規則第2条

となります。それでは一つずつ確認していきます。

(1)非常勤職員は労働条件を書面により明確にし、雇用しているか。

ここでは「非常勤職員の労働条件」について、3つの観点から確認しています。

まずは、疑問点をおさらいします。

まずは法令を確認していきましょう。

労働基準法

(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金労働時間その他の労働条件明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

ここでは、事業主が労働者と労働契約を締結した際に、その契約条件を明示する事が定められています。そして明示すべき条件とその具体的方法が、次の法令で定められています。

 

労働基準法施行規則

第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項
 
② 使用者は、法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件事実と異なるものとしてはならない
 
③ 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、第一項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
 
④ 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
一 ファクシミリを利用してする送信の方法
二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

ここでは先の法第15条で定められる、労働者に明示すべき労働条件明示する方法について定められています。

 

まず明示しなければならない条件として「一」から「十一」の内容を定めることが義務付けられています。さらに明示する方法として、「書面の交付」、「ファクシミリ(=ファックスの事)」、「電気通信(=電子メール等)」が定められています。

労働基準法施行規則

第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
(~中略~)
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
(~以下省略~)

ここでは、使用者が労働者を雇い入れの際に明示すべき労働条件の1つが定められています。いくつかありますが、そのうちの一つが「労働契約を更新する場合の基準」に関するものです。

これは契約期間が満了時のトラブルを回避する為に記載する事項となります。

ただし、雇入れ時の契約締結の際に「労働契約を更新しない」と定めておけば、この契約更新に関する事項を定める必要はありません。

 

以上を見てきましたが、ここまでは通常の雇入れ時と、さほど変わりません。

 

では「非常勤職員」、つまり短時間労働者を雇い入れる際の注意点等はあるのでしょうか?

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)

(労働条件に関する文書の交付等)
第六条 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間・有期雇用労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項及び第十四条第一項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。
 
2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。

ここでは、「短時間・有期雇用労働者(=短時間労働者)」を雇い入れた時に労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のもののうち、短時間労働者にとって重要な事項であるものを厚生労働省令で特定事項として定め、事業主が文書の交付等により明示しなければならないものとし、それ以外の事項は同条第2項において文書の交付等の努力義務について定めてあります。

 

この短時間労働者にとって重要な事項が、次の法令に定めれています。

パートタイム労働法施行規則

(法第六条第一項の明示事項及び明示の方法)
第二条 法第六条第一項の厚生労働省令で定める短時間・有期雇用労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。
一 昇給の有無
二 退職手当の有無
三 賞与の有無
四 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
 
2 事業主は、法第六条第一項の規定により短時間・有期雇用労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。
 
3 法第六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、第一項各号に掲げる事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを当該短時間・有期雇用労働者が希望した場合における当該方法とする。
一 ファクシミリを利用してする送信の方法
二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該短時間・有期雇用労働者が当該電子メール等の記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)
 
4 前項第一号の方法により行われた法第六条第一項に規定する特定事項(以下この項において「特定事項」という。)の明示は、当該短時間・有期雇用労働者の使用に係るファクシミリ装置により受信した時に、前項第二号の方法により行われた特定事項の明示は、当該短時間・有期雇用労働者の使用に係る通信端末機器等により受信した時に、それぞれ当該短時間・有期雇用労働者に到達したものとみなす。

ここでは、先ほどのパートタイム労働法第6条において定められる、明示すべき特定の事項について定められています。他にも明示する事項に差異が無い事、明示する方法等が定められます。ここに通常の労働者を雇い入れた場合とは異なる点があります。

 

決裁印は?

さて、根拠となる法令を確認しましたが、ここで気になる点があります。

それは疑問点にも挙げた「決裁印」の必要性です。

 

ここでま紹介してきた法令の中には、雇入れ時の決裁印について具体的な文言は見当たりません。しかし、調べてみると雇入れ時の決裁印は義務のように語られています。

 

何が正しいのでしょうか?

 

結論から言いますが、決裁印の義務性について明確に言及している法令等を見つける事は出来ませんでした。

 

それでは「決裁印は必要ない」というと、そうではないようです。

ポイントは職員の雇入れ時の取扱いにあると考えられます。

 

以前も紹介しましたが、職員の採用は理事長の専決事項に該当します。

言い換えると、職員の雇入れは本来、理事会の審議事項に相当するということです。

そのように考えると、以下の様な図式が成り立ちます。

職員雇入れ = 理事会での審議事項

しかし、定款等に理事長の専決事項として「職員の任免に関する事項」を定めておけば、採用時の理事会開催は必要なくなります。その採用の際、職員を採用した=理事会の審議を省略した、という意味で決裁印は必要になるという事ではないでしょうか。

 

これらを踏まえた上で、(1)の確認事項を一つずつ根拠法令に照らしながら、確認していきます。

 

まず(1)について、労働条件の交付について、労働基準法第15条等にも定められているように、労働条件を文書等により明確化し交付する義務があります。文書以外にもファックスや電子メールでの交付方法がありますが、後に出力して書面を作成することができるものに限られますので注意が必要です。

 

(ア)非常勤職員の採用について、雇用伺いで決裁を受けているか。

監査資料に書かれている法令等には、雇入れ時の決裁印について定められていませんが、理事会の審議によって承認されたという意味で、決裁印は必要なのかもしれません。

 

(イ)現状と差異はないか。

これは労働基準法施行規則第5条、パートタイム労働法施行規則第2条に定められているように、現状の労働内容と、雇入れ時に締結した労働契約の内容は一致していなければなりません。

 

(ウ)賃金は契約どおりに支給しているか。

労働基準法施行規則第5条やパートタイム労働法施行規則第2条に定められているように、短時間労働者を雇い入れる際に労働条件には「賃金」はもちろん、「昇給」や「退職手当」等の有無・支給方法に関する項目を定めることが義務付けられています。

使用者は、そこで定めた支給方法に従って、賃金を支給しなくてはなりません。

 

まとめ

「非常勤職員」では、通常の雇入れ時と同じように労働条件を明確にし、それを書面等で交付する必要があります。ただし、短時間労働者を雇い入れる場合は、そこからさらに「雇用期間の定め」や「賞与」、「退職金」の有無等について書面に定めなくてはなりません。これが通常の雇用者を雇い入れる際に異なる点です。

それらを踏まえて今回の「非常勤職員」の要点は、次の2つになると言えるでしょう。

①短時間労働者の雇入れ時は、通常の労働者と同じように労働条件を締結し、その締結した内容を書面で交付する。

②短時間労働者を雇い入れる時、短時間労働者特有の明示すべき事項がある。

次回は「給与規程の整備及び給与支給状況」について調べていきます。