事務員の保育園日誌|複雑な保育園業務の改善方法を

保育園で働く事務員の日常や役立つスキル、業務の改善について紹介します!

【保育園業務解説!】監査資料から考える保育園における業務の義務性について  職員処遇「10:職員の健康管理」

前回は「9:衛生管理者等」について解説・紹介しました。

今回は「10:職員の健康管理」を解説・紹介していきます。

 

職員の健康管理」について、次の9つの項目に沿って調べられます。

(1)新規採用職員の採用時の健康診断が実施されているか。また、検査項目い漏れはないか。なお、職員の雇入れ時(採用決定日以降)に、労働安全衛生法に基づく健康診断書の提出を義務付ける場合は、健康診断書料は施設負担となっているか。

(2)職員全員の定期健康診断は年1回、適正に実施され、記録の整備がされているか。また、検査項目に漏れはないか。なお費用は全額施設負担としているか。

(3)正職員以外の臨時職員や「常時使用する短時間職員」も(1)(2)の健康診断の対象としているか。

(4)受診していない職員はいないか。

(5)再検査、精密検査対象者に対して、必要な県さ・治療を受けられるように配慮しているか。

(6)再検査等の結果を、施設において確認しているか。

(7)短時間職員(常時使用する短時間職員)以外の者に対しても雇入れ時に健康診断を実施するか、又は、健康診断書を徴しているか。また定期健康診断を実施してるか。

(8)腰に著しい負担のかかる作業に常時従事する職員について、腰痛に関する健康診断を実施するか、又は、健康診断書を徴しているか。なお、健康診断以外に腰痛予防対策を実施しているか。

(9)常時使用する労働者が50人以上いる事業所

ストレスチェックの有無

さらにここに関係する書類が、

・職員健康診断記録

になります。そして対応する根拠法令が、

(1)・・・労働安全衛生規則第43条、労働安全衛生法66条

(2)・・・労働安全衛生規則第44条、H22基発0125第1号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び労働安全衛生規則第44条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準の一部を改正する件等の施行等について、労働安全衛生法及び同法施行令の施行について(昭和47年9月18日基発第602号)13(2)イ、※要参照 労働安全衛生規則第44条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準、労働安全衛生規則第51条

(3)・・・「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」第3-10-(4)-ト 

※監査資料では「第3-11-(4)-ト」となっているがこれは間違い※

(4)、(5)・・・なし

(6)・・・労働安全衛生法第66条の3

(7)・・・「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」第3-11-(4)-ト

(8)・・・職場における腰痛予防対策の推進について(平成25年6月18日基発第0618号第1号)、(職場における腰痛予防対策指針4-(2)、(3)、5)、(別紙作業態様別の対策Ⅳ)

(9)・・・労働安全衛生規則第52条の21

となります。それでは一つずつ確認していきます。

 

(1)新規採用職員の採用時の健康診断が実施されているか。また、検査項目に漏れはないか。なお、職員の雇入れ時(採用決定日以降)に、労働安全衛生法に基づく健康診断書の提出を義務付ける場合は、健康診断書料は施設負担としているか。

ここでは職員の採用時に健康診断の実施について確認されます。

さらに付随する確認事項として、検査項目健康診断書の提出を義務付けている場合健康診断料の施設負担について確認しています。

確認事項が多いので、1つ1つ整理しましょう。

 

◇確認事項◇

  1. 新規採用職員の採用時の健康診断が実施されているか。
  2. 健康診断時の検査項目に漏れはないか
  3. 健康診断書の提出を義務付けている場合、健康診断書料は施設負担か

 

まずは「」から調べていきたいと思います。

疑問点をおさらいしましょう。

それでは法令を確認しましょう。

労働安全衛生規則

(雇入時の健康診断)
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
 既往歴及び業務歴の調査
 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査
 胸部エックス線検査
 血圧の測定
 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
 低比重リポたんコレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポたんコレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
 血糖検査
 尿中の糖及び白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
十一 心電図検査

ここでは、労働者の雇入れ時の健康診断を義務として定めています。

さらにその健康診断の内容として、「」~「十一」の項目にそって診断を受ける事が定めてあります。

 

ただし、ここにも定められていますが、労働者が雇入れ日から遡って3ヵ月以内に健康診断を受けており、それを証明できる書類等を提出した場合は、改めて健康診断を受ける必要はありません。

 

それでは次の法令を確認しましょう。

労働安全衛生法

(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない
 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。
 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

細かい内容については省略しますが、基本的に「事業者が労働者に対して健康診断を行わせる」点が共通して言います。

 

このように2つの法令を確認すると、職員採用時の健康診断の義務、その際に行われる健康診断の検査内容については、義務として定めてあることが分かりました。

 

確認事項「」では、健康診断書の提出を義務付けている場合の、その健康診断書料の施設負担について確認しています。

 

 ※しかし考えてみると、ここでは不思議な事を確認しています。

 

事業主が労働者に対して健康診断を受けさることは義務です。

その義務である健康診断を労働者が受ければ、健康診断に関する健康診断書は最終的に事業主と労働者の双方に渡されます。つまり、健康診断書の提出を義務付けようがいまいが、労働者の受けた健康診断書は、自動的に事業主の手元に渡ってくるのです。

 

提出の義務云々は関係ないのではないでしょうか。

 

話は逸れましたが、事業主が労働者に健康診断を受けさせるのは義務ですが、実は事業主はその費用も負担する事になっています。

 

それは「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」において、次のように定められています。

労働安全衛生法および同法施行令の施行について

13 健康管理

(2) 第六六条関係

 第一項から第四項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上当然、事業者が負担すべきものであること。

労働安全衛生法66条第1項から第4項に定められる健康診断は、法で定められた事業主が行うべき義務である以上、そこに発生する費用は事業主が負担すべきだと定めてあります。

 

確認していることは健康診断書の費用負担ですが、先ほども言ったように健康診断は事業主の義務あり、その費用は事業主が負担すべきものです。当然、健康診断の費用の中に健康診断書の費用も含まれているでしょうから、その費用も事業主が負担すべきものでしょう。

 

それでは確認事項をまとめてみましょう。

新規採用職員の採用時の健康診断が実施されているか。

法第43条や法第66条に定められているように、事業主は労働者に対して健康診断を実施しなければなりません。

 

健康診断時の検査項目に漏れはないか

健康診断の内容についても、検査内容を法第43条等に定めてあります。

 

健康診断書の提出を義務付けている場合、健康診断書料は施設負担か

健康診断は事業主の義務であり、それに掛かる負担、そこに付随する費用も事業主の負担となります。

 

(2)職員全員の定期健康診断は年1回、適正に実施され、記録の整備がされているか。また、検査項目に漏れはないか。なお、費用は全額施設負担としているか。

ここでは職員の定期健康診断の実施、関係する記録の整備について確認されます。

 

まずは確認点をおさらいます。

(1)において労働者の健康診断は義務であることが分かりました。さらに健康診断において行われるべき検査内容、健康診断の費用負担についても分かっています。

 

その為、この(2)では次の2つの点について調べていきたいと思います。

◇確認事項◇

  1. 定期的に健康診断が行われているか
  2. 健康診断の記録の整備が行われているか

 

それでは、まずは法令を調べてみましょう。

 

労働安全衛生規則

(定期健康診断)
第四十四条 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し一年以内ごとに一回定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
 既往歴及び業務歴の調査
 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
 胸部エックス線検査及び喀痰検査
 血圧の測定
 貧血検査
 肝機能検査
 血中脂質検査
 血糖検査
 尿検査
十一 心電図検査
 第一項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
 第一項の健康診断は、前条、第四十五条の二又は法第六十六条第二項前段の健康診断を受けた者(前条ただし書に規定する書面を提出した者を含む。)については、当該健康診断の実施の日から一年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。
 第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、同項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。

ここも先ほどと同様、健康診断実施に関する事業者の義務について定められます。

そして健康診断を年1回以上、定期的に行う事を定めてある点には注意が必要です。

 

また、検査内容についても「」の項目について変更点があります。

この点については「H22基発0125第1号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び労働安全衛生規則第44条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準の一部を改正する件等の施行等について」では「胸部エックス線検査及び喀痰検査の対象者の見直し」として定められています。

 

その点以外で大きく異なる点は見られませんので、規則43条44条は少し内容が異なるという程度に思っていれば十分だと思います。

 

しかし注意すべき点があります。

確認事項では「記録の整備」についても確認されていますが、ここまで調べた法令には「記録の整備」については定められていません。

 

いくつか調べてみても、「記録の整備」に関する法令は出てきませんでした。

その代わりにこんな法令を見つけました。

労働安全衛生規則

(健康診断結果の記録の作成)
第五十一条 事業者は、第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断若しくは法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第四十三条等の健康診断」という。)又は法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づき健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない

 労働安全衛生規則等に定められる健康診断を行った場合、事業主はその結果に基づき健康診断個人票を作成し、5年間保存する事が定められています。

 

ここで、疑問なのは健康診断個人票作成です。

実は、僕はこれを作成したことはありません。職員の行った健康診断の結果通知を保管してはいますが、それを基に何か作成したことは1度もありません。行政監査の時も、健康診断の結果通知を見せたことはありますが、特に指摘事項等に挙がることもありませんでした。

 

そこでさらに詳しく調べてみると、次のような記述を見つけました。

上記の健康診断はいずれも労働安全衛生法によって定められた事業者の義務であり、実施後は労働基準監督署への報告が必要です。ただし、定期健康診断や特定業務従事者健康診断の場合報告義務があるのは常時50人以上の労働者を使用している事業場のみです。事業場の労働者の数が50人未満の場合は、労基署への報告は義務ではありません。

Health Support System『健康診断結果の報告提出は義務?提出期限や罰則はあるの?』

ここで言う「上記の健康診断」とは、法令に定められる13の健康診断です。

 

注意すべきは、ただし書き以降の記述です。そこでは、定期健康診断等の報告義務は常時50名以上の労働者を使用している事業場のみであるとしています。

 

つまり、先ほど確認した法第51条記述を踏まえて考えると、健康診断の提出の義務のある施設は、法第51条に定められる健康診断個人票を作成しなくてはなりませんが、提出義務のない施設では、健康診断の結果通知のみを保存しておくことで「記録の整備」になるのではないでしょうか。

 

(3)正職員以外の臨時職員や「常時使用する短時間職員」も(1)(2)の健康診断の対象としているか。

ここで確認される「常時使用する短時間職員」について、当初、僕は「パートタイムの職員」だと思っていましたが、これは間違いでした。

 

まずは、この「常時使用する短時間職員」について確認していきたいと思います。

厚生労働省のホームページによると、次の2ついずれの要件をも満たす者の事を言います。

(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)
(2)その者の1週間の労働時間数当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数4分3以上であること。

この(1)(2)に該当する者が「常時使用される短時間職員」となります。

 

また次の法令を確認します。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」

ト  健康診断
事業主は、健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第 66 条に基づき次に掲げる健康診断を実施する必要があること。
(イ)  常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回定期に行う健康診断

(ロ)  深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
(ハ)  一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
(ニ)  その他必要な健康診断
この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が 1 年(労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第 45 条において引用する同規則第 13 条第 1 項第 2
号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては 6 月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により 1 年以上使用されることが予定されている者及び 1 年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
 その者の 1 週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の 4 分の 3 以上であること。
なお、1 週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の4 分の 3 未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1 週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数のおおむね 2 分の 1 以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと

このように短時間労働者(=短時間職員)に対して、法第66条に基づき、雇入れ時及び年1回以上の定期健康診断を受けさせる事が義務付けられています。

 

職員を採用した際、労働者の希望や労働時間によって雇用形態は区別されますが、短時間職員も一般的な職員と同じように健康診断を受けさせる義務がある事に注意が必要です。

 

(4)受診していない職員はいないか。

ここでは健康診断を受診していない職員の有無について確認しています。

繰り返しになりますが、事業主が労働者を雇用した場合、健康診断を受けさせる義務があります。

 

必ず受診させるようにしましょう。

 

(5)再検査、精密検査対象者に対して、必要な検査・治療を受けられるように配慮しているか。

ここでは再検査等の対象者となった労働者に対して、必要な検査等を受けられるように配慮しているかを確認しています。

 

実は、健康診断後の再検査について労働安全衛生法には定められていません

 

しかし、再検査の必要性のある労働者をそのまま労働させ、仮にその労働者に健康被害等が発見されれば、事業主の安全配慮について責任問題を問われる場合があります。

 

また再検査の義務については定められていませんが、労働安全衛生法第66条の4~5には、健康診断後、事業主は労働者の健康安全を保持する為に、必要に応じて医師の意見聴取や労働者の就業場所や就業時間等の変更を行うなどの措置をとらなければなりません。

 

事業主は、再検査の必要性のある労働者がいた場合、再検査を受けさせる義務はありません。しかし、その労働者の健康を守る義務がある事を忘れてはいけません。再検査等が分かった場合、その労働者に対して必要となる検査や治療を受けさせるようにしましょう。

 

(6)再検査等の結果を、施設において確認しているか。

ここでは、再検査等の結果を施設で確認・把握しているかを確認しています。

 

しかし(5)でも触れましたが、再検査について労働安全衛生法には定められていません。ここでいう「再検査等」とは、具体的には何を意味しているのでしょうか?

 

これについては、根拠となる法令をもとに考えていきたいと思います。

労働安全衛生法

(健康診断の結果の記録)
第六十六条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第六十六条第一項から第四項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。

細かい内容は省略しますが、ここでは法令で定められる「健康診断」を労働者に受診させた場合、その結果を記録しておくことが定められています。

 

この法令と(6)の確認事項を合わせて考えた時、ここでいう「再検査等」とは、法第66条等に定められる「健康診断」の事も指していると言えるでしょう。

 

つまり(6)では、健康診断や再検査等の結果を記録を確認していると考えられます。

 

ただし、記録については(2)で説明したように、労働者が50名以下の事業所については、労働者の健康診断結果等を保管しておくことで対応できるでしょう。

 

(7)短時間職員(常時使用する短時間職員)以外の者に対しても雇入れ時に健康診断を実施するか、又は、健康診断書を徴しているか。また定期健康診断を実施してるか。

ここでは(3)で確認した短時間職員以外の者を雇い入れた場合の健康診断の実施等について確認しています。

 

まず、ここで確認される短時間職員以外の者とは、どんな雇用形態の者でしょうか?

根拠法令を調べてみます。

ト  健康診断
事業主は、健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第 66 条に基づき次に掲げる健康診断を実施する必要があること。
(イ)  常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回定期に行う健康診断

(ロ)  深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
(ハ)  一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
(ニ)  その他必要な健康診断
この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が 1 年(労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第 45 条において引用する同規則第 13 条第 1 項第 2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては 6 月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により 1 年以上使用されることが予定されている者及び 1 年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
 その者の 1 週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の 4 分の 3 以上であること。なお、1 週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の4 分の 3 未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1 週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数のおおむね 2 分の 1 以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと

ここで注目すべきは「(ニ)」です。

そこでは「常時使用する短時間労働者」が、「①期間の定めのない労働契約により使用される者」と「②1週間の所定労働時間が、同じ業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上」の、2つの要件を満たしている者であると定めています。

 

つまり、単純にこの2つを満たしていない労働者が「常時使用する短時間労働者以外の者」であると言えるのではないでしょうか。

 

職種や雇用形態として特別な名称があるわけではないので、何と呼べばいいのか分かりませんが、ともかく「(ニ)」に該当しない者を雇い入れた場合の、健康診断等の実施について確認されます。

 

と、いってもこの「常時使用する短時間労働者以外の者」についての健康診断の義務についても「(ニ)②」の「なお、~」に定められています。

なお、①に該当しつつも、1週間の所定労働時間が、同じ業種の通常の労働者の1週間の労働時間の4分の3未満の場合であっても、おおむね2分の1時間以上である場合の者は、健康診断を受けさせる事が望ましい

筆者独自解釈

つまり、常時使用する短時間労働者以外の者に対して、健康診断を実施する事は義務付けられていないのです。

 

ただし、(5)でも書きましたが、使用者が労働者の健康管理を怠った場合、その責任問題を問われる場合があります。

 

こうした短時間労働者以外の者に健康診断を実施する義務はありませんが、労働者を雇い入れた以上は、事業主は彼ら彼女らの健康も守らなくてはなりません。雇用形態に関わらず、健康診断を定期的に受診させる事がベターでしょう。

 

(8)腰に著しい負担のかかる作業に常時従事する職員について、腰痛に関する健康診断を、6ヵ月毎、また、採用時、配置換え時に実施しているか。なお、健康診断以外に腰痛予防対策を実施しているか。

ここでは健康診断において腰痛に関する診断を受けているかを確認しています。

まずは確認事項を整理しましょう。

◇確認事項◇

  1. 腰に著しい負担のかかる作業に常時従事する職員について、腰痛に関する健康診断を、6ヵ月毎、また、採用時、配置換え時に実施しているか
  2. 健康診断以外に腰痛予防対策を実施しているか

 

まずは「」から確認していきます。根拠法令を確認しましょう。

職場における腰痛予防対策の推進について(職場における腰痛予防対策指針4)

4 健康管理

(1) 健康診断

重量物取扱い作業、介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後6月以内ごとに1回定期に、次のとおり医師による腰痛の健康診断を実施すること

イ 配置前の健康診断

配置前の労働者の健康状態を把握し、その後の健康管理の基礎資料とするため、配置前の健康診断の項目は、次のとおりとすること。

(イ) 既往歴(腰痛に関する病歴及びその経過)及び業務歴の調査

(ロ) 自覚症状(腰痛、下肢痛、下肢筋力減退、知覚障害等)の有無の検査

(ハ) 脊柱の検査:姿勢異常、脊柱の変形、脊柱の可動性及び疼痛、腰背筋の緊張及び圧痛、脊椎棘突起の圧痛等の検査

(ニ) 神経学的検査:神経伸展試験、深部腱反射、知覚検査、筋萎縮等の検査

(ホ) 脊柱機能検査:クラウス・ウェーバーテスト又はその変法(腹筋力、背筋力等の機能のテスト)

なお、医師が必要と認める者については、画像診断と運動機能テスト等を行うこと。

ロ 定期健康診断

(イ) 定期に行う腰痛の健康診断の項目は、次のとおりとすること。

a 既往歴(腰痛に関する病歴及びその経過)及び業務歴の調査

b 自覚症状(腰痛、下肢痛、下肢筋力減退、知覚障害等)の有無の検査

(ロ) (イ)の健康診断の結果、医師が必要と認める者については、次の項目についての健康診断を追加して行うこと。

a 脊柱の検査:姿勢異常、脊柱の変形、脊柱の可動性及び疼痛、腰背筋の緊張及び圧痛、脊椎棘突起の圧痛等の検査

b 神経学的検査:神経伸展試験、深部腱反射、知覚検査、徒手筋力テスト、筋萎縮等の検査

なお、医師が必要と認める者については、画像診断と運動機能テスト等を行うこと。

ハ 事後措置

事業者は、腰痛の健康診断の結果について医師から意見を聴取し、労働者の腰痛を予防するため必要があると認めるときは、2の(3)の作業の実施体制を始め、作業方法等の改善、作業時間の短縮等、就労上必要な措置を講ずること。また、睡眠改善や保温対策、運動習慣の獲得、禁煙、健康的なストレスコントロール等の日常生活における腰痛予防に効果的な内容を助言することも重要である。

(2) 腰痛予防体操

重量物取扱い作業、介護・看護作業等の腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対し、適宜、筋疲労回復、柔軟性、リラクセーションを高めることを目的として、腰痛予防体操を実施させること。なお、腰痛予防体操を行う時期は作業開始前、作業中、作業終了後等が考えられるが、疲労の蓄積度合い等に応じて適宜、腰痛予防体操を実施する時間・場所が確保できるよう配慮すること。

(3) 職場復帰時の措置

腰痛は再発する可能性が高いため、休業者等が職場に復帰する際には、事業者は、産業医等の意見を十分に尊重し、腰痛の発生に関与する重量物取扱い等の作業方法、作業時間等について就労上必要な措置を講じ、休業者等が復帰時に抱く不安を十分に解消すること。

ここで、腰に負担のかかる作業に従事する労働者に対して、配置時、その6ヵ月以内ごと、そして定期的に腰痛に関する健康診断を行う事を義務付けています。

 

次に「」について調べていきます。

職場における腰痛予防対策の推進について(職場における腰痛予防対策指針4-(2)、(3)、5

(2) 腰痛予防体操

重量物取扱い作業、介護・看護作業等の腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対し、適宜、筋疲労回復、柔軟性、リラクセーションを高めることを目的として腰痛予防体操を実施させること。なお、腰痛予防体操を行う時期は作業開始前、作業中、作業終了後等が考えられるが、疲労の蓄積度合い等に応じて適宜、腰痛予防体操を実施する時間・場所が確保できるよう配慮すること。

ここでは、腰痛の予防について作業前や後、作業中などに腰痛予防の体操を行う行う事が定められています。

 

他にも「指針(3)」では、腰痛再発の可能性を考慮して、作業時間や腰に負担の掛かる作業に対して必要な措置を講じる事を定めています。また「指針5」では腰痛予防の為の必要教育を施すようにも定めてあります。

 

※他にも「(別紙作業態様別の対策Ⅳ)」では、腰痛の対策について、腰痛の発生原因の把握、作業による世痛のリスクの見積もりや回避・軽減処置、福祉用具の利用等を定めることによって、日常の業務において腰痛を予防する取り組みを推進しています。

 

しかし、なぜ腰痛の予防のみ独立して確認しているのでしょうか?

 

この疑問について、先ほど示した「職場における腰痛予防対策の推進について」の序文に次のようにありました。

職場における腰痛予防対策については、平成6年9月6日付け基発第547号「職場における腰痛予防対策の推進について」により「職場における腰痛予防対策指針」を示し、当該業務従事者に対する腰痛予防対策の指導に努めてきたところである。

この間、腰痛は、その発生件数が大きく減少したものの、依然として多くの業種で業務上疾病全体に占める割合が最も大きい疾病であり、一方、社会福祉施設をはじめとする保健衛生業においては、最近の10年間で発生件数が2.7倍増加していることから、引き続き、腰痛予防対策の推進は重要な課題である。

これを読んでみると分かるように、腰痛が多くの業務の中で、業務上かかる疾病の中で最も多い疾病であり、特に社会福祉施設等では発生件数が10年間で2.7倍まで増加していると言います。

 

そうした背景もあり、健康診断において腰痛検査が重視されているのでしょう。

 

このように、腰痛に関する健康診断並びに日常的な腰痛予防に関して、法令等で義務として定められている事には注意が必要です。

 

(9)常時使用する労働者が50人以上いる事業所 ストレスチェックの実施

ここでは、ストレスチェックの実施について確認しています。

 

まずは法令を確認しましょう。

労働安全衛生規則
(検査及び面接指導結果の報告)
第五十二条の二十一 常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごと一回定期に、心理的な負担の程度を把握するため検査結果等報告書(様式第六号の三)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

ここでは、常時50名上の労働者を使用する場合、事業主は1年以内に定期的に「心理的な負担の程度を把握する」ための検査結果報告書を作成し、かつ所轄の労働基準監督署に提出する事が義務付けられています。

 

この「心理的な負担」を把握する事がストレスチェックです。

 

また労働安全衛生法においても、次のような法令があります。

心理的な負担の程度を把握するための検査等)

第六十六条の十 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

このように事業主は、労働者に対して「心理的な負担」を把握する為にストレスチェックを行わなくてはなりませんが、それを実施するのは、医師等の厚生労働省令で定められた者によってのみ行われなくてはなりません。

 

またストレスチェックを行った際に、

 ストレスチェックを受けた労働者の同意なしに、検査結果を事業主に提供してはならない。

 ストレスチェックを受けた労働者は、その結果によっては医師の面談を希望する事ができる。その面談結果ついて事業主は記録しておかなければならない。

などの注意点があります。

 

法令にもありますように、このストレスチェックを行うのは常時50名以上の労働者を使用する事業場です。しかし、事業主が労働者の心理的な負担を把握しておく事は、労働者の健康管理の把握の観点からも重要な事だと思います。

 

労働者の心理的負担の早期発見は、労働者の負担軽減や、職場環境・業務の改善にも繋がります。つまり職場の労働環境の大幅な改善となるでしょう。

 

50名以下の労働者を使用する事業場では、簡易的でも構いませんので、事業主は定期的に労働者と面談を行う事が望ましいでしょう。

 

まとめ

職員の健康管理」では、職員等の健康診断の義務性やそこに関係する費用の事業主負担、また、腰痛に関する健康診断予防、職員のストレスチェックについて確認されました。

 

それらを踏まえて今回の「職員の健康管理」の要点は、次の4つになると言えるでしょう

①職員を採用した際は、例外を除いて、健康診断を受けさせる義務がある。
健康診断にかかる関係費用の負担事業主側にある。
腰痛の健康診断、腰痛予防の実施は義務である。
④職員のストレスチェックは職員数に応じて義務とならない場合があるが、事業主は職員のストレスチェックを行う事望ましい

 

次回は「職員研修」について調べていきます。

 

備考

 

ここからは、根拠法令の中でも義務ではなく「要参照」になっている法令を紹介します。あくまでも「要参照」なので、義務性を有しているかは疑問が残ります

 

労働安全衛生規則第44条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準

労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第四十四条第三項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める基準を次のように定め、昭和四十七年労働省告示第九十三号(労働安全衛生規則第四十四条第二項の規定に基づき労働大臣が定める基準を定める件)は、廃止する。

労働安全衛生規則第四十四条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準

(平一九厚労告二四八・題名追加、平二二厚労告二五・改称)

次の表の上欄に掲げる健康診断の項目については、それぞれ同表の下欄に掲げる者について医師が必要でないと認めるときは、省略することができる

項目:省略できる者

身長の検査:20歳以上の者

胸囲の検査:①四十歳未満の者(三十五歳の者を除く。)、②妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの、③BMI(次の算式により算出した値をいう。以下同じ。)が二十未満である者、④自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが二十二未満である者に限る。)

胸部エックス線検査:四十歳未満の者(二十歳、二十五歳、三十歳及び三十五歳の者を除く。)で、次のいずれにも該当しないもの

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令(平成十年政令第四百二十号)第十二条第一項第一号に掲げる者、②じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)第八条第一項第一号又は第三号に掲げる者

喀痰検査:①胸部エックス線検査によって病変の発見されない者、②胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者、③胸部エックス線検査の項の下欄に掲げる者

貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査及び心電図検査:四十歳未満の者(三十五歳の者を除く。)

 

労働安全衛生規則第51条
(健康診断結果の記録の作成)
第五十一条 事業者は、第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断若しくは法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第四十三条等の健康診断」という。)又は法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。