大人が読んでも楽しい「漫画」
コロナへの対応や考え方がようやく緩和されてきたこの頃。
しかし、いまだに在宅ワークや外出自粛の雰囲気は残っているように思います。
気軽に出かける事に少しの抵抗を感じる時、自宅でゆっくりと漫画を読む休日があってもいいかもしれません。
今回は、少ない巻数で休日に一気に読める完結済みの漫画を3つ紹介します。
全て別ジャンルなので、その時の気分によって読む漫画を変えるのも面白いかも知れません。
『黒博物館シリーズ』 スプリンガルド 全1巻
作者:藤田和日郎
あらすじ
1838年、ロンドン。
女性ばかりを狙っては悪戯をする犯罪者が現れた。
脚に仕込んだ「バネ足」で突如として現れるその姿は、黒いマントに身を包み、目と口を青い炎で光らせ、奇怪な声で笑う。その異様な犯罪者を人々はいつしか「バネ足ジャック」と呼び恐れるようになった。
スコットランドヤードも懸命に捜査したが、ついに犯人は逮捕されることなくその姿を消したのだった。
しかし、それから3年後の1841年。
突如として、再び「バネ足ジャック」が現れた。今度は女性を殺害する殺人鬼として。。。
3年前、事件を担当していたジェームズ・ロッケンフィールド刑事は、当初「バネ足ジャック」の犯人だと目されていた人物の元に向かう。それはアイルランドとイングランドに広大な領地をもつ大貴族、ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド侯爵だった。
当初、反目しあっていた二人だったが、ある1人の女性をきっかけに曖昧なまま協力していくことなる。はたして二人は「バネ足ジャック」の犯行を止める事が出来るのか?そして「バネ足ジャック」の正体は?
18世紀を舞台に描かれる”スチームパンク冒険活劇”
実はこの漫画、当時の有名な都市伝説を参考にしているようです。
しっかりとした時代考証、さらに各話の最後には、当時の時代背景や実際の事件についての考察、登場人物のもととなった人物の解説などが書かれており、物語への興味・理解をさらに深めてくれます。
作者は「うしおととら」や「からくりサーカス」などで知られる藤田和日郎。
当初、粗野で傲慢に描かれるストレイド侯爵も、その生い立ちや境遇が丁寧に描かれているので妙に人間味に溢れたキャラクターに仕上がっています。また登場する「バネ足」も一種のオーバーテクノロジーと思わせて、その実、どこか実現されていそうな現実味のある”怪異”のような印象を与えてくれます。
圧倒的な画力とテンポよく進むストーリー、読み終えた後のほんの少しの切なさ。
1冊で重厚な小説を読み終えた様な満足感を得られる作品です。
※ちなみに、『~シリーズ』とあるように、これは『黒博物館シリーズ』の第1作目です。他にも、後の近代看護の母と呼ばれる少女と幽霊の物語『黒博物館 ゴースト&レディ』(全上下巻)、”怪物”を生み出したホラー界の女王が主人公の『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』(全6巻)と続きます。すべて世界観は同じですがシリーズ自体は独立しているので、どのシリーズから読んでも楽しめる作品です。
辺獄のシュヴェスタ 全6巻
作者:竹良実
あらすじ
現代のドイツ。
ある日、ライン川の川底から1体の「鋼鉄の処女」が引き揚げられる。
そこに飾れる聖母マリアの顔は、奇妙な事に右目に傷のある「隻眼のマリア」だった。さらに、その「鋼鉄の処女」には、バチカンのものであることを示すローマ教皇の紋章と共に、謎のメッセージが刻まれていた。
1542年、ドイツのある村で家族によって人買いへと売られることになった少女エラは、持ち前の機転をきかせて人買いの元から逃げだすことに成功、逃亡先で治療師の女性アンゲーリカと出会う。アンゲーリカはエラを保護し、エラは彼女から様々な知識と倫理観を教わりながら、本物の親子のように仲睦まじく暮らしていくのだった。
しかし、その幸せは長くは続かなかった。
数年後、クラウストルム修道会の異端審問官が現れたことで、エラ達の運命は大きく変わっていくことになる。異端審問官はアンゲーリカの持つ知識が修道会の計画には不都合であることから、彼女を「魔女」と認定し、ついには処刑してしまうのだった。
目の前でアンゲーリカの命を奪われたたエラは、今回の魔女狩りを主導した修道会の総長エーデルガルトへの復讐を決意する。
アンゲーリカの死後、エラは「魔女の子」として更生施設・クラウストルム修道院へと収容された。そこで志を共にする仲間たちと出会い、彼女らと協力して修道会への反抗を始める。
しかし、それは想像を絶する過酷な運命の幕開けに過ぎなかった。
少女の紡ぐ暗黒復讐劇
こちらは全体的にシリアスで重く、残酷な描写も続く作品です。
この本作の見所は、逆境の中でも決して諦める事のない主人公エラの姿勢にあります。
「決して諦めない」と言うのは簡単ですが、その具体的な姿や方法は意外と知られていません。
本作における「諦めない」とは、「常に考え続ける」姿勢です。
考える事を放棄すれば、周りの流れに身を任せるだけでいいので、楽になる事でしょう。
しかし真に目的を達成する為には、考える事を放棄するのではなく、常に「なぜ?」と疑問を持ち続けることです。
考え、行動する先にこそ未来は開かれるのではないでしょうか。
はたして少女たちの進む先には、一体どのような運命が待っているのか。
手に汗握る展開に、ページをめくる手が止まらない1冊です。
リストランテ・パラディーゾ 全1巻
作者:オノナツメ
あらすじ
現代のイタリア。
田舎からローマにやってきたニコレッタは、ある目的のためにリストランテ『カゼッタ・デッロルソ』を訪れる。
その目的とは、母親オルガの再婚相手に自分と言う娘がいる事をバラすためだった。
幼くして両親が離婚し、祖父母に預けられたニコレッタは、自らが再婚の為に成人するまで娘を置き去りにした母を恨み、彼女の再婚相手がオーナーを勤めるリストランテまでやってきたのだった。
しかし再開も束の間、すっかり母親のペースに巻き込まれ、ニコレッタはなし崩し的にローマで生活する事になる。
そこで何とかオーナーの店の見習いとして働き始めたニコレッタだったが、そこの従業員は全員が、老眼鏡着用が必須の紳士という店だった。老眼鏡紳士が目当ての女性客で連日予約でいっぱいのリストランテだが、ニコレッタも店のカメリエーレ長サント・クラウディオ・パラディーゾが気になり始める。
小さなリストランテを舞台に描かれる、大人の恋模様
先ほどの2作品と比べると、だいぶ落ち着いた作品になります。
「リストランテ」とは、イタリア語で「レストラン」を意味します。
ただし日本のように、気軽に立ち入れるお店ではなく、高級感のあるお店を指すことが多いそうです。
このリストランテを舞台に、老眼鏡の似合う老紳士たちと、彼らを取り巻く様々な人たちとの交流や心情を繊細に描いています。
本作は、本編全1巻と番外編全3巻から成り立っています。
本編は主人公ニコレッタとクラウディオの恋の行方や母親オルガとの親子関係を中心に描かれます。反対に番外編では、リストランテの他の従業員を中心に、そこで繰り広げられる恋や葛藤が描かれます。
休みの日にコーヒー片手に、しっとりと読みたい作品です。
終わりに
今回は、趣向を変えて「漫画」、特に巻数が少なく完結済みであるという前提の作品を紹介しました。
僕自身、ここで紹介した作品以外にも、現在いくつかの作品を並行して読んでいます。
「いい大人が休日に漫画なんて。。。」と思われるかもしれませんが、大人だからこそ、たまの休日は童心にかえって漫画を楽しむのも良いものではないでしょうか。
いつもの休日がのんびりと、しかし充実した1日となることでしょう。