今回から児童処遇について解説していきます。
第1回目は「1:定員変更」について紹介・解説していきます。
「定員変更」について、次の5つの項目に沿って調べられます。
(ア)利用定員は認可定員と一致又は認可定員の範囲内となっているか。※認可定員の人数(最終的な変更届出年月日)
(イ)私的契約児はいないか。
(ウ)利用者の定員超過があるか。
(エ)定員を超えている状況が恒常的にわたっていないか。※「ある」場合、定員超過の解消予定等に該当する事項に〇で囲むこと。
(ア)定員増をする予定
(イ)1年から2年で解消する予定
(ウ)地域の保育事情により、早急の解消は困難
(エ)具体的解消計画はない
(オ)その他
(オ)認可定員を変更する場合、児童福祉施設変更届出書を提出しているか。
さらにここに関係する書類が、
・児童福祉施設変更届出書(第48号様式)
・施設認可書
になります。そして対応する根拠法令が、
・児童福祉法施行細則第33条
・保育所への入所の円滑化について(平成10年2月13日児保第3号)
・特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について(H28.8.23府子本第571号・28文科初第727号・雇児発0823第1号)
となります。それでは一つずつ確認していきます。
- (ア)利用定員は認可定員と一致又は認可定員の範囲内となっているか。※認可定員の人数(最終的な変更届出年月日も記入)
- 利用定員が認可定員を超えた場合の対処法
- (イ)私的契約児はいないか。
- (ウ)利用者の定員超過があるか。
- (エ)定員を超えている状況が恒常的にわたっていないか。※「ある」場合、定員超過の解消予定等に該当する事項の記入
- (オ)認可定員を変更する場合、児童福祉施設変更届出書を提出しているか。
- まとめ
(ア)利用定員は認可定員と一致又は認可定員の範囲内となっているか。※認可定員の人数(最終的な変更届出年月日も記入)
ここでは利用定員と認可定員の一致、又は利用定員は認可定員の範囲内か否か、さらに補足として、認可定員数の最終的な変更届出年月日を確認しています。
まずは疑問点のおさらいです。
それでは確認していきましょう。
まずは認可定員と利用定員の違いを確認します。
僕自身、突然聞かれると今でも混乱しますが、そこには次のような違いがあります。
認可定員 → 教育・保育施設及び地域型保育事業設置の際に認可された定員
利用定員 → 給付費算定の基礎となる定員(実際に施設を利用している者の実人数)
簡単に言うと、認可定員とは保育園で定める各年齢の園児数の事です。これは各施設の役員会によって決定されますが、行政機関によって認可(=許可)されます。反対に利用定員とは、実際に保育所を利用している園児の実人数です。
※ちなみに、大雑把ですが「各年齢×利用実人数」が保育所の委託費になります。
この違いをしっかりと理解したうえで、(ア)の根拠法令から確認します。
根拠法令の「児童福祉法施行規則第33条」は、児童福祉施設に入所した者から徴収する費用について定められます。特別関係ありませんので、次の「保育所への入所の円滑化について」を確認しましょう。
保育所への入所の円滑化について
一 保育所への入所円滑化対策について
実施要綱に基づく定員を超えての保育の実施については、以下の通り行うものとする。
(一) 実施要綱において定めるとおり、保育の実施は定員の範囲内で行うことが原則であり、定員を超えている状況が恒常的に亘る場合には、定員の見直し等に積極的に取り組むこと。この場合の恒常的に亘るとは、連続する過去の2年度間常に定員を超えており、かつ、各年度の年間平均在所率(当該年度内における各月の初日の在所人員の総和を各月の初日の認可定員の総和で除したものをいう。)が120%以上の状態をいうものであること。
なお、定員の見直しにあたっては、平成21年度の一部改正により、昭和51年4月16日厚生省発児第59号の2「児童福祉法による保育所運営費国庫負担金について」の保育単価表の定員区分の細分化を行い、定員変更への取り組みを阻害しないようとした趣旨を踏まえること。
(二) 定員を超えて保育の実施を行う場合は、地域において年度途中における保育所入所の受入体制を整えること。
(~以下略~)
ここでは保育所への入所の円滑化に伴う、認可定員を超えての保育の実施及び私的契約児の入所について定められています。
ここでは定員を超えて保育を実施する際の注意点が記されています。
まず(一)では保育の実施について、原則として「定員の範囲内で行うこと」が記されます。つまり(ア)で確認されている事を踏まえると、施設で決まっている認可定員数を超えた利用定員数で保育を行う事は、基本的に認められていない事が分かります。
ただし、ここで「原則」と記されているように絶対の義務ではないという点には注意が必要です。
例えば、年度によっては認可定員を超えた入所がある場合もあります。
また過疎地域では施設の運営の為に、あえて認可定員を超えた入所を行わざるを得ない場合もあります。
現実として、認可定員を超えた入所(=利用定員)は起こりうる事態です。
では、そうした事態が起きた場合は、どのように対処すればいいのでしょうか?
利用定員が認可定員を超えた場合の対処法
それでは利用定員が認可定員を超えた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。引き続き「保育所への入所の円滑化について(一)」を確認してみましょう。
保育所への入所の円滑化について(一)
保育の実施は定員の範囲内で行うことが原則であり、定員を超えている状況が恒常的に亘る場合には、定員の見直し等に積極的に取り組むこと。
と「(利用定員が認可)定員を超えている状況が恒常的に亘る」場合には、定員の見直し等に取り組むことが推奨されています。それでは、ここで言う「恒常的に亘る」とはどのような状況でしょうか?
続きを確認しましょう。
この場合の恒常的に亘るとは、連続する過去の2年度間常に定員を超えており、かつ、各年度の年間平均在所率(当該年度内における各月の初日の在所人員の総和を各月の初日の認可定員の総和で除したものをいう。)が120%以上の状態をいうものであること。
ここでは2つの要件に該当する時に、定員の超過が「恒常的に亘る」と定義しています。
- 「連続する過去の2年度間常に定員を超えて」いる状況
- 「各年度の年間平均在所率が120%以上の状態」である事
まず「連続する過去の2年度間常に定員を超えて」とは、文字通り2年度連続で利用定員が認可定員を超えている状況を指します。次の「各年度の年間平均在所率が120%以上の状態」とは、少し分かりにくいですが簡単に言うと、利用定員数が認可定員数を超えている場合、その割合が120%を超えている状態の事です。つまり「2年度連続して利用定員が認可定員を超えており、かつその割合が120%を超えている状態」の時、定員の積極的な見直しが推奨されているという事です。
例えば「定員60名」で考えてみましょう。
例①の場合、令和3年度は定員の120%を超えていますが、令和4年度は120%は超えていません。この場合「恒常的に亘る」とは言えず、定員の積極的な見直しには該当しません。
例②の場合、令和3年度に120%、令和4年度に至っては140%を超えています。この場合は「定員を超えている状況が恒常的に亘る」状況に該当します。
この2つの要件を満たしている場合は、令和5年度に向けて積極的な定員の見直しが推奨されています。
このように、利用定員が認可定員を超えた場合、定員変更の見直しが推奨されていますが、先ほども少し触れたように場合によっては認可定員を超えた入所を受け入れざるを得ない場合があります。
その場合は、即座に定員の増加変更をするのではなく、まずは行政機関に相談しましょう。定員を変更すると施設の委託費や職員の負担等、保育園の運営が大きく変わる原因になります。定員の変更は施設運営の根幹に関わりますので、慎重な対応を心がけましょう。
(イ)私的契約児はいないか。
ここでは私的契約児について確認されています。
そもそも「私的契約児」とは何でしょうか?
私的契約児とは、市町村によって「保育の必要性がない」と判断された児童を指します。(また、そうした児童を認可保育所などに入所させる場合、親と施設が直接契約を結ぶ制度を「私的契約」と言います。)
(イ)では、こうした私的契約児を保育所で預かっているかを確認しています。
これは先ほどの「保育所への入所の円滑化について」の「二」に定められます。
保育所への入所の円滑化について
二 私的契約児の入所について
私的契約児については、定員に空きがある場合に、既に入所している児童の保育に支障を生じない範囲で入所させることは差し支えないものであること。
私的契約児を入所させる場合、次の2つの点がポイントになります。
「定員に空きがある場合」
「既に入所している児童の保育に支障を生じない範囲」
この2つの要件を満たしているとき、入所させることが出来ます。
ただし、片方もしくは両方の要件を満たしていない場合は、「差し支え」があると判断され、私的契約児を入所させる事は難しいと言わざるを得ないでしょう。
私的契約児を入所させる場合には、この「定員の空き」と「保育への支障」が重要な点になります。
※「差し支えない」という書き方であるため、考えようによっては「私的契約児」の入所自体が認められていない印象を受けます。もし施設で私的契約の話を受けた場合、一度行政機関に相談するのも手段かもしれません。
(ウ)利用者の定員超過があるか。
(エ)定員を超えている状況が恒常的にわたっていないか。※「ある」場合、定員超過の解消予定等に該当する事項の記入
ここでは利用者の定員超過の有無、定員を超過している場合の対応方法について確認しています。定員超過の考え方と対応方法については(ア)で確認しましたので省略します。
(オ)認可定員を変更する場合、児童福祉施設変更届出書を提出しているか。
ここでは、認可定員を変更した場合における手続きについて確認しています。
まずは疑問点のおさらいです。
(ア)等で確認したように、ある一定の条件下で利用定員が認可定員を超えた場合、定員の変更が推奨されています。ここでは定員の超過によって現定員を変更する事になった場合の児童福祉施設変更届書の提出を確認しています。
それでは根拠法令を確認しましょう。
と言っても、監査資料に記載されている根拠法令を探しても定員の変更について確認できませんでした。変更届に関する法令は「児童福祉法」及び「児童福祉法施行規則」に記載されています。法令を確認してみましょう。
第三十五条第四項 国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。
ここでは児童福祉施設の設置者について定められています。
まず「国、都道府県及び市町村以外の者」とあります。
一体誰の事を指しているのか非常に分かりにくい文章ですが簡単に言いますと、行政機関等ではなく社会福祉法人等を指します。
社会福祉法人等は都道府県知事の認可を受ける事で児童福祉施設を設置する事が出来ますが、その設置や変更の際の細かな注意点が「児童福祉法施行規則」に定められています。
児童福祉法施行規則
第三十七条 法第三十五条第三項に規定する厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 名称、種類及び位置二 建物その他設備の規模及び構造並びにその図面三の二 経営の責任者及び福祉の実務に当る幹部職員の氏名及び経歴四 収支予算書五 事業開始の予定年月日③ 前項の申請をしようとする者は、次に掲げる書類を提出しなければならない。一 設置する者の履歴及び資産状況を明らかにする書類二 保育所を設置しようとする者が法人である場合にあつては、その法人格を有することを証する書類三 法人又は団体においては定款、寄附行為その他の規約(~中略~)
⑥ 法第三十五条第四項の認可を受けた者は、第一項第二号若しくは第三号に掲げる事項又は経営の責任者若しくは福祉の実務に当たる幹部職員を変更しようとするときは、都道府県知事にあらかじめ届け出なければならない。
ここでは児童福祉施設を設置する際に届け出る事項の内容を定めてあります。
法令が前後しますが、まず「⑥」を確認しましょう。ここでは「法第三十五条第四項」に沿って、児童福祉施設を設置した社会福祉法人は「施行規則第三十七条」の「第一項第二号若しくは第三号」に掲げられる事項を変更しようとする際は、都道府県知事に届け出る事が定めてあります。
そしてこの「第一項第二号若しくは第三号」とは「施行規則第三十七条」の「③」まででが該当します。さらにその第一項に定められる「三 運営の方法」が定員の変更に該当します。
長くなりましたが、このように児童福祉施設を設置している者(=もしくは法人)が施設の定員を変更しようとした場合、児童福祉法施行規則第第三十七条第六項に定められるように、都道府県知事に届出書を提出しなくてはなりません。その届出書こそが「児童福祉施設変更届書」なのです。
ちなみに、当園では定員の変更を行った際にこの「児童福祉施設変更届」に加え、「定員の変更について開催した理事会・評議員会の議事録」、「最低基準調書」、「職員名簿」、「施設図面」を県に提出しました。
まとめ
今回の「定員管理」では、利用定員と認可定員の違い、定員数を超えた場合の対応や行政上の手続き及び義務について確認されました。
それらを踏まえて今回の「定員管理」の要点は、次の4つになると言えるでしょう
①原則、利用定員は認可定員を超過してはいけない。②定員を超過した場合、定員変更が推奨されている。③定員変更は、定員数の120%を2年連続で超えた時。④定員を変更する際は、「児童福祉施設変更届書」の提出が義務となる。
次回は、「保育の計画と内容」について調べていきます。