事務員の保育園日誌|複雑な保育園業務の改善方法を

保育園で働く事務員の日常や役立つスキル、業務の改善について紹介します!

【保育園業務解説!】監査資料から考える保育園における業務の義務性について  職員処遇のまとめ

業務改善の一環として解説してきた「監査資料から考える保育園における業務の義務性について」

前回のブログで「職員処遇」については終了しました。

 

今回は「職員処遇」全12回をまとめてみました。監査の準備のお役に立てればと思います。

 

 

 

1 就業規則の準備・運用

ここでは就業規則等、規則の整備について確認されています。

 

まず労働者を10人以上雇入れている事業所は就業規則や給与規程等諸規則の整備が義務となります。作成の際の注意点として、作成した規則は所轄の労働基準監督署に届け出る事で初めて使用できます。また規則を変更する際は、労働者の代表等の意見書を添付しなくてはなりませんが、この意見を規則の変更の際に反映させる義務はありません

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2 人事・労務管理体制

ここでは職員の採用や定年制について確認されています。

 

職員採用の際に、その労働条件を明示するとともに、書面にして交付しなければなりません。具体的には雇用契約労働条件通知書等が該当します。こうした労働条件が明確に分かる物を事業主は交付しなくてはならないのです。他にも出勤簿の適正な作成や定年制を整備する際の重要点が3つありました。

 

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3 労働時間

ここでは労働者の労働時間について確認されています。

 

労働者の労働時間ですが、原則1日時間、週40時間となります。また8時間以上の勤務をさせる場合、1時間の休憩が必要になります。ただし特定の業種や労働人数の場合は週の労働時間を延ばすことは可能です。また変形労働時間制の導入の際は、労働組合や労働者の代表の同意書の取得、提出等が義務となります。

 

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4 休日

ここでは労働者の休日数について確認されています。

 

まず事業主は、労働者に1週間に1回の休みを与えるか、4週間で4回以上の休みを与えるか、どちらかの休日付与の義務があります。

 

5 時間外労働

ここでは時間外労働を実施する際の注意点について確認されます。

 

時間外労働を命じる場合、事業主は労働組合または労働者の代表と「書面による協定」を締結し、労働基準監督署へ提出しければなりません。またその協定書内に全部で5つの事を定める必要があり、また上限も決まっています。この点には注意が必要です。

 

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6 休暇等

ここでは年休(有給)、産前産後、育児、介護休暇等の取得や付与について確認されます。

 

事業主は時季指定を用いる事で10日以上の年休を取得している労働者に対して年5日以上の有給を与えなくてはなりません。ここに5日以上の有給取得の義務があります。またその際、就業規則へ記載等が必要になる点には注意が必要です。他にも産前産後、育児、介護休暇請求された場合は、休暇を与える事が義務となります。

 

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7 非常勤職員

ここでは非常勤職員の採用について確認されます。

 

」でも確認しましたが、職員の採用時には、労働条件書面にして交付しなくてはなりません。基本的に雇用形態に関わらず職員を採用した場合は、労働条件を書面にして通知するようにしましょう。

 

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8 給与規程の整備及び給与支給状況

ここでは給与規程の整備や給与の支給状況について確認されます。

 

まず就業規則に賃金を定めている以上、給与規程を整備しなくてはなりません。

またそこには職員の給与について、昇給賞与初任給決定方法等を適正に定めておかなければなりません。また給与の銀行振込を行う場合、労働者の代表等と書面による協定各労働者の同意書が必要になります。他にも給与からの法定外控除を行う場合にも労働者の代表等と書面による協定が必要になります。給与の各種手当については、その算出の基になった証拠書類が必要になります。また必要に応じて各種保険に加入義務のある保険もありますので注意しましょう。

 

その①

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その②

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その③

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9 衛生管理者等

ここでは、事業場(=職場)に設置する衛生管理者等について確認されます。

 

事業場の規模によって設置する管理者等は、次のように変わります。

常時50以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者

常時10以上50以下の労働者を使用する事業場では、衛生推進者

各事業場では、こうした労働者の健康安全等管理・推進する者を選任しなくてはなりません。また選任した管理者等を必ず周知する事も忘れてはいけません。

なお、50名以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者を中心とした衛生委員会定期的な開催が義務付けられています。ここが衛生推進者を選任した事業場と異なる部分です。

 

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10 職員の健康管理

ここでは、職員の健康診断やストレスチェックについて確認されます。

 

職員の採用した際は、基本的に健康診断を受けされる義務があります。これは常勤職員や非常勤職員、パート職員等、雇用形態の区分に関係なく受けさせる必要があります。また健康診断の検査項目も法令で定められています。さらに健康診断の受診に掛かる費用施設負担であることも忘れてはいけません。

その他にも、再検査の必要のある職員への通知、腰痛の予防対策ストレスチェック等、労働者の健康管理を事業主は守らなければなりません。

 

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11 職員研修

ここでは職員の研修について確認されます。

 

研修の目的は「施設や職員の資質等の向上」にあります。施設はこうした目的の為に、内外問わず職員の参加できる研修会の機会を確保する事が義務付けられています。ただし、注意したいのは研修会自体への参加義務はありませんので、自分の都合や体調等を考慮して無理のないところで参加する事が望ましいでしょう。

 

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12 秘密保持等

ここでは、常務上知り得た利用者の情報の取扱い等について確認されます。

 

業務上知り得た情報、つまり利用者等の機密情報(=個人情報)は、職員であっても、または職場を退職した職員であっても、基本的に外部漏洩してはいけません。また退職する際は、こうした機密情報を漏洩させないようにする為措置が必要になります。

ただし、利用者やその家族の人権や生命が脅かされる場合、警察や行政などの関係機関に情報を渡すことは禁じられていません。この辺りの判断は慎重に行いましょう。

 

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おわりに

監査資料をもとに「職員処遇」に関する確認項目を、その根拠となる法令等から確認・調べてきました。そこで分かったことは、この「職員処遇」とは「職員を守るための措置となるべきもの」という点です。

 

昨今、保育園を取り巻く状況は混乱の極みにあります。

ニュースやSNS等を見てみると、保育士をはじめとした現場の職員の悲痛な声で溢れています。持ち帰えりの仕事が横行し、行事に伴うサービス残業、現場を無視した経営陣の独断決定等、職員を蔑ろにするような状況が散見されます。

 

勿論、こうなってしまったのは国にも責任はありますが、一番の原因は園長先生にあると思います。

 

園長先生が現場を見ずに、子どもたちの事ばかりを考えてあれやこれやと保育や業務に口を出せば、現場の職員を酷使・混乱させることに繋がります。園長先生も保育園の職員です。その為、子どもの事を考えるのは当然かもしれません。しかし、重要な事を忘れています。現場で直接子どもたちに保育を提供しているのは誰でしょうか?

 

それは、保育士をはじめとした現場の職員です。

 

僕は、現場の職員の労働環境等を整える事が、園児へ提供する保育の質に直結していると考えています。だからこそ園長先生は、施設において誰よりも職員の事を考えなくてはなりません。

 

その為には、今まで行っていた業務や行事等の義務性疑いましょう

または職員に聞いてみるのも一つの手段です。園長先生が理想や目的をもって指示していた業務等も、もしかすると「大変だった」とか「何のためにやっているのか」などという現場の意見が出てくるかもしれません。

 

そこから業務等の根拠となる法令を調べてみてください。

調べてみて、もし義務性がないのであれば、一度思い切って辞めてみましょう。

きっと保育園全体で見ると何も変わらないと思います。

変わるの現場の職員の負担です。

 

業務等の義務性や必要性を調べる時は各施設で使用している監査資料をお使いください。最初はかなり難解ですが、時間をかけて調べると思わぬ収穫を得られるでしょう。

 

業務の改善で悩んでいる多くの方へ、このブログが少しでもお役に立てればと思います。